2件目の入れ墨調査、「違法」!
2015/02/19 法務相談一般, 労働法全般, その他
事案の概要
大阪市長主導のもと実施された入れ墨調査の回答を拒否し、戒告を受けた女性が、市の処分取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は16日、調査を違法と判断し、請求を認めた。同様の事案で「違法」との判断がくだされたのは昨年12月に続き2例目となる。原告の女性に入れ墨はなく、「仕事と無関係で必要性がない」として調査に応じず、12年8月に戒告処分されていた。
判決によれば調査は社会で差別される恐れのある個人の情報を集めることを禁じた大阪市の個人情報保護条例6条に照らし違法とされたが「入れ墨に抵抗を持つ人が多い」とも指摘しており、一般に入れ墨に対して良い印象がないのが実情である。
そこで、今回は企業の雇用に際して入れ墨がどういった点で問題になるのか考えてみたい。
雇用上の問題点
今日において入れ墨、タトゥーと呼ばれるものはファッションの一部であるといえるであろう。海外でいうところのタトゥーも日本における入れ墨も厳密には技法の違いがあるものの彫物という点では相違はない。清廉性やクリーンな企業イメージを求める企業としては彫物をいれている社員を雇用したくないと考えるだろう。
採用段階では調査の可否が主とした問題である。これについては企業側に広く「採用の自由」が認められ、三菱樹脂事件においても「これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない」と判断されている。しかしながら、個人情報保護との関係で社会的差別の原因となるおそれのある事項や、思想・信条、信仰、労働組合への加入の有無、医療上の個人情報等を収集してはならないとの指針が定められている(「労働者の個人情報保護に関する行動指針」平成12.12.20 )。したがって、法律上直接の規制でないとしても尊重していかなければならないという点には注意が必要である。
採用後の段階においてはやはり、入れ墨等を理由に解雇ができるかという点が最も問題になると思われる。解雇にあたっては「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法16条)というハードルを超えなければならない。前述のようにファッションの一部とし入れ墨等が捉えられる以上、趣味・嗜好に踏み込んでの解雇は不当との結論になると思われる。
コメント
2020年の東京オリンピックに際して、今後日本に数多くの外国人が足を運ぶ事が予想され、それに伴い外国人労働者の雇用を考える企業も少なくないだろう。日本での感覚とは異なり、海外においてタトゥーはかなり普及しているといっても過言ではない。このような状況下では改めて入れ墨等の問題が浮き彫りになってくると思われる。企業法務の観点からは予め対策をうつべきである。入れ墨等を隠すボディーファンデーションや個別の健康診断を受けることによって、採用過程をすり抜けることも予想されるので、採用過程での明確な説明や就業規則を定める等の対策をとるべきであろう。まだ、対策をとられていない企業は是非一考してみてはいかかであろうか。
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