【中国】レアアース生産削減 日本への影響は?
2014/08/22 法務相談一般, 民法・商法, その他

事案の概要
中国の工業和信息化部(工業情報化部)は、2014年8月19日、「2014年第2期工業業界における立ち遅れ、生産過剰企業淘汰・廃棄リスト」に掲載された10産業132社のうち、レアアース企業28社が含まれていることを発表した。同リストに掲載された企業は、2014年末までに生産ラインを停止し、設備を解体しなければならない。生産の再開、設備の移転も禁じられている。上記のリストに含まれる中国のレアアース企業の淘汰する生産ラインの規模は、合計10万3800トンに上る。内訳は、採鉱・選鉱で4万1000トン、製錬で6万2800トンとなる。中国全体の生産能力は採鉱・選鉱で25万トン、製錬で40万トンであるから、約15パーセント削減されることになる。
コメント
レアアースとは、サマリウムやネオジウム、ユウロピウムなどの希土類元素の酸化物や塩化物などの総称をいう。様々な用途の素材として用いられ、例えば蓄電池や磁石の性能向上、蛍光灯の蛍光体、排ガス浄化触媒などに利用されている。レアアースの地球上の存在量は、実はスズや鉛と同じくらいであり、その名のように量が希少であるというわけではない。しかし、中国の市場参入で価格が低迷して西側企業の撤退が相次ぎ、米国の有力鉱山が環境問題などで後に休止したことなどから、国際市場における中国による寡占が急速に進んだ。そして、現在では、世界のレアアースの資源の3分の1を保有し、市場の9割を中国が占めている状況になっている。
ところが、2014年7月末、レアアースを過剰生産したことにより、中国のレアアース輸出平均価格が前年度同期比で約37パーセント減となった。そのため、価格の下落に歯止めをかけるために生産削減をしたものと考えられる。また、レアアースは有限な資源であることから、資源の枯渇を懸念して年々輸出を制限しており、中国からの輸入に依存している日本の企業にとっても影響を与えるものとみられる。具体的には、ハイブリッド車や省エネ家電の部品にレアアースが使われているため、このような商品の生産に影響を与えかねない。また、2010年には、沖縄・尖閣諸島をめぐり日中が対立したことで、レアアースの日本に対する輸出を一時停止した事態も起きている。
このような事態について、政府は、いくつかのレアアースについては、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構によって官民合わせて60日分の備蓄を経済安全保障のために従来から行っている。しかし、その対策は一時的なものにすぎない。そのため、現在、レアアースの市場のシェアを拡大しているオーストラリアとの間で取引をして中国以外での調達先を確保する政策がとられている。また、レアアースの使用を少なくしたり、レアアースに代わる原料の技術開発、さらには、国内での再利用推進など、長期的な解決策が進められている。
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