【東京地裁】高次脳機能障害、30年前の事故の後遺症への賠償認める
2014/04/17 訴訟対応, 民事訴訟法, その他

事案の概要
30年前に旧国鉄の中央線高架から落下したコンクリート片が頭部に当たった東京都の男性(31)と両親が、鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜市)に対し、落下事故による高次脳機能障害などの後遺症について1億7500万円余りの損害賠償を求めていた訴訟の判決において、東京地裁は14日、約1億6500万円の支払いを命じた。鉄道・運輸機構は判決の内容を精査した上で、控訴するかを決める見通し。
1983年6月、男性は1歳のときに事故に遭い、26歳で高次脳機能障害である診断を受けた。事故当時、国鉄は治療費や賠償金を支払うとともに、将来後遺症が出た場合の賠償義務を認めることで示談していたが、機構側は男性が知的障害の認定を受けた06年(23歳)時点で後遺症を認識できたとして、09年の提訴時点には既に3年の時効が成立していたと主張していた。これに対し吉田徹裁判長は「高次脳機能障害の症状が表れるのは、知的障害よりも遅くなると考えられる」と述べ、機構側の主張を退けた。
高次脳機能障害とは高次の脳機能に関する障害であり、「学術用語としては、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。」(注)とされ、脳損傷に起因するとは限らない知的障害と必ずしも一致しない。また症状は脳機能の多岐にわたるが程度にも差があり、外からは分かりにくく自覚症状も薄いという性質がある。高次脳機能障害は特に交通事故による後遺症の問題から平成13年度以降厚生労働省が本格的に研究に取り組んでいる。
(注) 国立リハビリテーションセンター
コメント
事故に起因する後遺症への賠償にはたびたび時効や除斥期間が問題となる。民法724条より損害賠償請求権は事故発生から20年の経過で消滅するが、本事案においては事故当時既に後遺症への賠償の合意がなされているため、後遺症の発覚から3年経過しているかが争点となった。本判決は知的障害と事故による高次脳機能障害を分けて考え、かつ後者は知的障害の発覚で自明とはならないことを判断したものと考えられる。土地工作物等による事故のリスクを負う企業にとって、今回の事案における高次脳機能障害など後遺症の発覚が遅れる場合の対応は重要になってくる。本事案はまだ確定していないため発達上の知的障害と高次脳機能障害の関係性について今後の動向が注目されるところである。
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