【電子書籍の海賊版対策】出版社に新たな権利が付与される可能性
2013/11/14 知財・ライセンス, 著作権法, その他

事案の概要
先日、文化審議会著作権分科会出版関連小委員会により、出版社に電子書籍に関する新たな権利を付与することを内容とする中間案が取りまとめられた。
これにより、たとえばインターネット上への画像の違法なアップロードなど、電子書籍の海賊版に効果的に対策すると共に、電子書籍の流通を促進しようという狙いがある。
従来、電子書籍の海賊版も違法ではあったが、適切な著作権保護がなされていたとはいえない状況にあった。
その原因は、電子書籍の違法な海賊版については、出版社ではなく著作者が対応することとなっていたためである。
すなわち、従来の出版過程においては出版社と著作者との間で出版契約が取り交わされ、それによって出版社に「出版権」が付与されることが一般的であった。
この「出版権」とは、頒布目的での紙の出版物としての複製を行う権利であり、出版社は出版権を設定することにより、独占的に紙の出版物を出版することができ、紙媒体の海賊版であれば出版者は自ら差止請求等の権利行使を行うことができる。
したがって、この「出版権」は電子書籍の海賊版対応に関しては不十分なものであり、電子書籍に対応した制度を作成しようとの趣旨の下、今回の中間案が取りまとめられた。
今回の中間案では、電子書籍の海賊版問題について、出版社が著作者に代わって適切な対応ができるように、新たな著作権法上の権利を認める方針を打ち出し、著作権法改正の案を示している。
コメント
「電子書籍ビジネス調査報告書2013」(インプレスビジネスメディア)によると、我が国における電子書籍の販売額としては、平成14年度の10億円から、平成24年度の729億円へと大きく成長している。
また、平成24年に日本書籍出版協会と電通総研によって実施された国内における書籍の海賊版不正流通に関する試算によると、海賊版の被害実態について、書籍の不正流通による国内の被害額は、平成23年の1年間で270億円とされ、そのうち漫画の被害額は224億円となっている。
そして、北米における平成19年から平成23年の過去5年間のコミック被害推定額は、1500億円から3000億円にも上るとされている。
今回の中間まとめが今後立法化される運びとなれば、成長を続ける新たな業界にとって、被害防止のための一助となるだろう。
一方で、各出版社、出版業界の関係者は従来の紙媒体にはない新しいルールを打ち出し、運用していく必要がでてくる。
従来の紙媒体とは異なり、電子書籍の海賊版被害は非常に広範囲で行われ、当事者も複数絡むなどの複雑な問題が生じることから、出版業界の関係者は今後、難しい業務をこなしていくことになるだろう。
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登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
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