内部通報者が逆転敗訴---広島高裁松江支部
2013/10/30 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
自治体及び自治労に所属する公共サービスに従事する者を組合員とする、消費生活協同組合法に基づいて設立された消費生活協同組合である全日本自治体労働者共済生活協同組合(以下「自治労共済」という。)で、自動車共済をめぐる不正な契約があったと厚生労働省に通報して解雇されたのは不当として、自治労共済島根県支部(以下「県支部」という。)の元職員、Aさん(61)が労働契約上の地位にあることの確認と解雇によって就労を拒否されていた期間の賃金の支払を求めた訴訟の控訴審判決で、広島高等裁判所松江支部(塚本伊平裁判長)は23日、解雇を無効とした1審判決(松江地方裁判所、三島恭子裁判官)を取り消し、「解雇は正当」としてAさんの請求を退けた。
塚本伊平裁判長は、Aさんが、上司である県支部事務局長が自らの使用するパソコンを起動させた状態で席を外していた隙に、同人に無断で、同パソコンのデスクトップ上に保存されていた複数のファイルを、Aさん所有のUSBメモリに複写して同情報を取得したことについて「自動車共済をめぐる問題は解決しており、情報を不正に取得する必要はなかった」と指摘。そのうえで、解雇したことは「合理的で正当」などとした。
Aさんの代理人は、公益通報者保護法の趣旨が理解されていない判決であり上告したいとしている。県支部は、コメントは控えたいとしている。
平成23年2月の1審判決は、Aさんの行為は公益通報目的でなされたものであって、県支部就業規則第58条(7)「服務規律に違反して,その事案が重大なとき」には当たらず、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、その権利を濫用したものとして無効であるとして、県支部に未払い賃金の支払いを命じていた。その理由として、Aさんの行為は契約偽装問題を行政機関等へ通報する際の資料とするためであったと推認でき、内部通報の資料として取得する必要性も高く、その内容も例えば顧客の信用情報等のように高度の機密性が求められるような内容とはいい難く、少なくとも県支部の職員であり通報者でもあるAさんに秘匿されるような内容のものであったとはいい難いという事などが挙げられている。
Aさんは、平成20年10月、自治労共済で不正な契約が行われていることなどを厚労省に通報、21年8月に「内部情報の不正取得」を理由に解雇されている。
以下参照裁判例
松江地方裁判所平成23年2月2日判決
平成21年(ワ)第433号
コメント
結局のところ、内部通報者の解雇が正当であるか不当であるかは個別具体的に判断するほかない。しかし、その判断においては公益通報者保護法の趣旨を没却することのないよう慎重な判断が望まれる。
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