一般医薬品の一部についてネット販売規制を第三者委員会が提言。
2013/10/09 薬事法務, 薬機法, その他

事案の概要
2013年1月11日,最高裁判所は一部医薬品の販売について,郵便販売等を行う場合は「医薬品を販売,または授与しないこと」を定めた薬事法施行規則について,一般用医薬品の郵便販売等を一律に禁止する限度において無効との判決を下した。その結果,一般用医薬品がインターネットで手軽に購入できることとなった。
この判決を受け,6月5日の首相による成長戦略第3弾スピーチで,インターネットでの一般用医薬品販売を解禁する旨明言した。ただし,同月14日に閣議決定された成長戦略においては,「スイッチ直後品目(医療用医薬品から転用後4年以内の品目)」と「劇薬指定品目(成人向けで副作用リスクの高い品目)」の合計28品目は別途専門家の意見を聞き,慎重な販売・使用を促す仕組みの検討をするとしていた。この検討に当たっては,インターネット販売・対面販売を問わず,合理的かつ客観的な検討がなされる旨発表されている。
こうした動向を受け,厚生労働省の有識者会議は,一部28品目の安全性検証を行い,8日,提言をまとめた。この提言によると,上記28品目について,本来の大衆薬とは異なる医療用に準じたカテゴリーと認識すべきであると指摘されている。そのため,使用者以外の代理人への販売や症状が出ていない状態で常備薬として販売することも認めないとされる。この提言はネット販売に限定した提言ではないため,ドラッグストアでの対面販売でも購入ができなくなる可能性も生じうる。
従来から厚労省はネット業者に最低1つの実店舗で週40時間の営業時間を求めるなど,一般医薬品のネット販売全面解禁について慎重な姿勢であった。殊に28品目についてのネット販売の全面解禁について慎重な姿勢であったとされる。そのため,同省は提言を受けて上記品目についてネット販売を規制する方向で調整することが見込まれている。
一方,政府与党においては,上記28品目を含む一般用医薬品の全面的なネット販売を解禁すべきとの声が強い。政府の規制改革会議も,これまで28品目のネット販売について全面解禁に消極的であった厚労省に対し,「ネット販売をするうえでの安全性の留意点を個別に議論すべきで,一律規制というのは6月の閣議決定に反する」と反発していた。
一般用医薬品のネット販売が全面的に解禁されるか,一部医薬品についての制限がなされるか。全面解禁派と慎重派の意見は真っ向から対立している。政府・与党内でも意見は対立しており,決着がつくまでは難航することが見込まれる。
以下,参考判例。
最高裁判所第2小法廷平成24年(行ヒ)第279号 平成25年1月11日判決
コメント
今回問題となった一般用医薬品は,安全性が十分に担保されていないと判断されたものである。インターネットでの医薬品販売は,一般用医薬品を容易に入手できるようになった反面,一般用医薬品による薬物事故を招く危険も有する。そのため,安全性担保が十分でない一般医薬品やリスクの高い医薬品の販売について,慎重な姿勢であるべきことは否定できない。
もっとも,ドラッグストアでの販売まで禁じる必要性までは疑問である。ネット販売と異なり,対面での販売であれば,医薬品のリスク説明や使用者の症状を把握することは可能である。また,代理販売であっても,購入者からの説明を受け,購入者へのリスク説明で対応は可能であろう。
薬事法施行令無効判決は,薬事法施行令を「新薬事法の趣旨に反する」ことを理由とする。新薬事法はその目的として「保健衛生の向上」を挙げている(薬事法1条)。ならば,一律に規制するのではなく,この趣旨に即した運用を目指すことが求められる。
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