専門スタッフ職への異動は降格人事?キャリアが国を提訴
2013/10/02 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
原告の男性は,1980年の入省以来,同省の課長職等を歴任してきた。だが,2011年1月,専門スタッフ職である「情報分析官」への異動を任じられた。現時点で男性は秘書課と政策課の両方に所属する政策情報分析官の職にある。
男性は降格人事の無効を求め,異動の取り消しや制度見直しを求め,人事院に審査請求を行ったが事務局段階で却下されたため,訴えを提起するに至った。東京地裁で10月2日,第1回口頭弁論が開かれ,国側は男性の訴えを退けるよう求めた。
事案詳細
「専門スタッフ職」とは,公務員の天下り批判を受けて設置されたポストである。2008年,国は国家公務員の天下り防止のために専門スタッフ職を設けた。人事院によると2013年4月現在で各省庁における専門スタッフ職は197人。
専門スタッフ職は,局長・課長・課長補佐などをはじめとするいわゆるラインの職業ではなくライン職にあるポストの職員を補佐するために設置されたものである。それまで,国家公務員はいわゆる官僚となれなかった場合,早期に退職することを余儀なくされ,いわゆる「天下り」が横行した。そこで,国は2007年9月に公務員制度を改め,官僚となれなかった者に対して「専門スタッフ職」のポストを設置し,「天下り」防止に努めてきた。「専門スタッフ職」となった場合,定年まで働くことが可能である。一方,職位・給与は課長クラスを下回るとされている。
原告男性によれば,情報分析官への異動に当たり,文書等の説明はなかったとのことである。国家公務員法上,正当な理由がなければ降格や免職は許されず,降格時には事前に説明書を手渡すことが要求されている(国家公務員法82条1項等)。また,男性は降格されるような理由も思いつかないとのことである。
専門スタッフ職制度の設置以後,同制度に関する訴訟は初めて。
以下,参考判例
札幌地方裁判所 平成21年(ワ)第2610号平成23年4月25日判決
東京地方裁判所 昭和57年(ワ)第15522号昭和61年1月27日判決
コメント
本制度施行後初めてとなる訴訟であり裁判所の判断が注目される。この案件においては国家公務員という地位ではあるので企業一般に同様の結論が妥当するかは定かでない。
それでも,降格に当たるか否かの判断が実質的になされるようであれば,一般企業における人事制度においても妥当するのではないだろうか。
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