消費者庁初の措置命令
2013/08/22 広告法務, 消費者取引関連法務, 景品表示法, その他

事案の概要
今月8月20日、消費者庁は、秋田書店に対して、発行するマンガ雑誌のプレゼントの景品数を水増しした組織的不正があったとして不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」)第4条1項第2号違反(有利誤認)を認め、措置命令を出した(同法第6条)。雑誌のプレゼントでの措置命令は初。
水増しがあったのは同社発行の『ミステリーボニータ』等3誌。水増しは、各雑誌にプレゼント1つに対して1人~50人の当選者があると記載しながらも、実際には発送しなかったり、当選者数より少ない数しか発送しなかった。当選者を紙面にて発表する場合には、架空の名前を用いていた。なお、現在は不当表示はなされていないようだ。
同社は、消費者庁に対して、「近年、メーカーからの景品の無償提供を受けられなくなり、経費削減のためにやった」と説明。これを受けて同社は「読者や関係者に深くおわびし、再発防止に取り組む」旨の謝罪文を公表。しかし、関係者や経営陣の責任についてはコメントを控えている。
この問題に関して、新たな事実が判明した。上記プレゼントを担当する女性が、同社からプレゼントの窃取等を理由として昨年2月29日に同社から解雇通知書を受け取っていたのだ。
女性によれば、不正について上司に訴えるも、「会社にいたかったら文句を言わずに黙って仕事をしろ」といわれたとのこと。その後女性は睡眠障害・適応障害を発症。そのための休職中の出来事だった。
女性側は、措置命令を出した消費者庁の調査により「罪をなすりつけられ」た懲戒解雇であることが裏付けられたとして、撤回を求めて提訴する意思を表明した。
コメント
今回の消費者庁の措置命令は、読者プレゼントの当選者の水増しに対するものとしては初めてのものであり、出版社を中心に企業に与える影響は小さくない。問題に関係する企業は、早急にコンプライアンスを実現すべく社内環境を整備すべきだ。また、個人情報の保護に配慮しつつも、「発送をもって発表に代えさせていただきます」等の方法ではなく、きちんと当選者を発表することも視野に入れるべきではないか。失った読者等の信頼も小さくない。
また、元プレゼント担当の女性に対する懲戒解雇処分にも問題は多そうだ。「罪をなすりつけられた」との女性の主張が正しければ、秋田書店は同処分を撤回したり賠償する等の対応を迫られるし、また、悪質な会社であるとのイメージが社会に浸透するだろう。
プレゼント代を「削減」したがために被った、秋田書店の代償は大きい。
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