コンプライアンスは「法令遵守」だけではない-カネボウ化粧品の自主回収問題-
2013/07/05   コンプライアンス, 危機管理, 民法・商法, メーカー

事案の概要

 カネボウ化粧品は4日、同社とその子会社が製造、販売している「カネボウブランシールスペリア」など8つのブランド54製品を、自主回収することを発表した。
 何れの製品にも、美白有効成分である「ロドデノール」が配合されている。「ロドデノール」は同社が独自に開発したものであり、2008年に厚生労働省から、薬事法に基づく医薬部外品有効成分として承認されている。
 同社によれば、今年5月より、化粧品を使用した消費者の中から、肌がまだらに白くなるという「白斑」と呼ばれる症状を訴える人がいるとの連絡があった。その後、同社が遡って調査したところ、現在39名が同様の症状を訴えているという。症状の原因としては、上記「ロドデノール」が疑われているが、明確には分かっていない。
 今回の問題において、社内の消費者相談窓口の対応に問題があったことも明らかとなった。2011年から肌の異常を訴える相談が消費者から寄せられていたにも関わらず、今年5月に皮膚科医の通報を受けるまで自社製品によるトラブルと捉えていなかった。同社はこれまで相談を寄せてきた消費者に対して病院を紹介してきており、病院側から利用者の持病と報告される場合が多かったことから、化粧品が原因とは認識せず、発覚が遅れたとのことである。

コメント

 今回の自主回収問題で注視すべきは、被害届出があった際の窓口対応である。最初の被害報告があった2011年に、早急に製品と被害との因果関係を調べ、「被害のおそれあり」と自主回収に踏み切っていれば、ブランドイメージの毀損は最小限に抑えられたのではないか。今回の自主回収問題は、どの企業にとっても他人事で済まされることではなく、企業にとってコンプライアンスとは何かを再考する、良い機会であると考える。
 コンプライアンスとは、「法令(ルール)を遵守する」という意味だけではない。「満たす、充足する」と訳されるラテン語“complere”を語源としており、様々な人のニーズに誠実に応えていく意味も含む。企業の場合、応えるべきニーズの相手は具体的に従業員、株主、地域社会、そして何より消費者である。コンプライアンスを「法令遵守」の意味で捉えれば、ロドデノールは確かに厚生労働省が薬事法に基づいて承認した成分である以上、法令の基準は満たしていたのだから回収の義務はない。しかし、コンプライアンスを「消費者のニーズに応えること」と考えると、「身体に悪影響を及ぼす影響ある製品は、直ぐに事態を公にして、早急に回収して欲しい」と考えるのが消費者の願いである。特に、化粧品事業であれば消費者の多くは女性であり、肌の異常には敏感であることを考えれば、このようなニーズは益々強まるであろう。身体に関わる問題である以上、思い込みで済まされる問題ではなく、消費者のニーズを的確に汲み取るシステムの改善をすることで「コンプライアンス」の実現に努めてほしい。
 カネボウが、今後、相談窓口及び被害報告の共有体制をどのように改変し、社会の信用を取り戻していくか注目したい。

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