「下請けいじめ防止」-消費税転嫁法成立-
2013/06/07   税務法務, 租税法, 税法, その他

事案の概要

2014年4月の消費税率引き上げを控え、「消費税還元セール」などの安売り文句を禁じた消費税転嫁対策の特別措置法が5日午前の参院本会議で、成立した。

 2017年3月末までの時限立法で、公正取引委員会や消費者庁などは近く、禁止または容認される表現を分かりやすく説明した指針をまとめる。

 同法は来年4月からの消費税率引き上げ時に、中小の納入業者が、大規模な小売業者から受ける買いたたきや不当な利益提供の要求などの「下請けいじめ」を防止するべく、禁止行為を列挙した。また、問題がある企業には立ち入り検査し、悪質な場合は社名を公表する。

解説

 本法は2014年4月における増税実施に伴い、商取引において中小業者が取引先から増税分の値下げを迫られ、泣き寝入りするといった、転嫁拒否の問題を防止すべく3年間の時限法として制定されたものである。

 現在、取引上、優越的地位にあるものが、取引先に対して不当に不利益を与える行為は「優越的地位の濫用」として、独占禁止法(以下、独禁法)で禁止されている。また、こうしたことは下請取引において多く発生することから下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)が独禁法の保管法として存在する。
 しかし、転嫁拒否が集中的かつ多数生じることから迅速性や効率的な対応が求められる一方で、以下の問題点が指摘されている。
①現行の独禁法は排除命令や課徴金命令といった行政処分を課すものであるが、要件が抽象的であり、法適用に時間がかかる
②課徴金の納付についても、国庫に納付されることから被害者の直接救済にはつながらない
③下請法については、独禁法に比して迅速に対処できるが、通常の売買取引には適用がない。

コメント

 まず問題の本質は、実際に広く行われている、転嫁拒否が現行法で摘発しきれていないことにある。そして、政府が上述した現行独禁法や下請法の問題点を認識しているならば、まず着手すべきは、新法の制定ではなく、現行法の改正であったのではないか。本法は3年間の時限法であるため、法律が失効する3年後には、政府が迅速性や効率性が問題であると言っている現行法に戻ることになってしまう。

 一方で、本法は、問題企業に対する立入り検査、悪質な場合の社名公表といった、企業に対して監視や調査を強化している点は評価出来る。買い叩きを始めとする不当行為を、いかに早期に発見できるかも今後重要になってくる。納入業者の自発値引きに見せる等、転嫁拒否の手口が巧妙化している現在、企業が被害を通報しやすくする制度、及び小売業者への監視・調査を綿密に行う体制を、今後様子を見つつ、より緻密に整える必要がある。

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