裁判員の国賠訴訟で改めて考える、企業のメンタルサポート
2013/05/08 労務法務, 労働法全般, その他

事案の概要
2013年3月福島地裁郡山支部で開かれた強盗殺人事件の裁判員裁判で、裁判員を務めた女性(62)が7日、裁判員を務めたことで急性ストレス障害になったとして、国に200万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。
女性は、2013年3月福島地裁郡山支部で開かれた、強盗殺人を巡る裁判員裁判に評議を含め、9日間の全日程にわたり参加。被害者の遺体のカラー写真を見たり、被害者が消防に通報した際の音声記録を聞いたりした後、食事がのどを通らず、夜も写真がフラッシュバックし、眠れなくなるなどの症状が出た。その後、病院で急性ストレス障害と診断され、現在も療養中である。
裁判員法は、正当な理由なく呼び出しに応じない裁判員候補者に、過料を科すことができる旨規定している。女性は、裁判員を務めることは「意に反する苦役」に当たり、憲法の定める基本的人権を侵害していると主張。裁判員法を成立させた国会議員には「重大な過失」があると主張している。
裁判員は遺体の写真や凶器を目の当たりにすることも多いため、その精神的負担は大きい。そのため最高裁は、24時間相談を受け付ける「裁判員メンタルヘルスサポート窓口」を開設している。しかし、2012年5月末までの、電話などを通じた相談件数は163件と少ない。無料の対面カウンセリングは5回までと制限が設けられているなど、使い勝手はあまりよくないようだ。
一方、従業員を裁判員として送り出す企業の側も、メンタル面に対するサポート体制が整っているとはいえない。従業員のメンタルヘルスケアに関心を寄せている企業は多いが、そのほとんどが仕事や、職場での人間関係のストレス軽減を目的としているだろう。
裁判員のメンタルケアは、一義的には国の責務だが、企業側のサポート体制も望まれる。
コメント
裁判員を経験し心の傷を負った者が、休職、退職といった事態に陥らないためにも、企業側の対策も必要である。メンタルヘルス法務主任者の活用も一つの手だろう。(2013年4月10日企業法務ニュース参照)
また、厚労省は、「労働者の個々の事情に応じて与えられる特別な休暇制度」の普及促進を掲げている(下記資料参照)。裁判員を経験した後に一定期間、リフレッシュのために休暇を与える企業があってもいいのではないか。
参考資料
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