大ヒット映画の原作使用料はどう決める?
2013/02/26   知財・ライセンス, 著作権法, エンターテイメント

事案の概要

興行収入が60億円にのぼる大ヒットとなった映画、『テルマエ・ロマエ』。『テルマエ・ロマエ』は元々、ヤマザキマリさんによる漫画が原作で、刊行されている巻数は2013年2月時点で、5巻と、多くはないものの、「マンガ大賞2010」「第14 回手塚治虫文化賞短編賞」をダブル受賞するなど、漫画として評価も高い。

映画『テルマエ・ロマエ』は、「テルマエ・ロマエ」製作委員会(フジテレビジョン、電通、東宝、エンターブレイン)によって製作されたが、この映画化の際に原作使用料は「100万円」のみであったことが話題となっている。また、映画のPR活動を行ってもノーギャラであったとのことである。

コメント

この問題を法的な問題として考えた場合、金額の設定は契約の問題である。そして映画化・・・すなわち、原作を翻案する際にはどのような契約がなされているかが問題となる。

翻案権とは、著作権の支分権のうちの一つで、著作物を独占排他的に翻案する権利をいう。そして、翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作する行為であると解されている。そして、翻案の例としては、小説を映画化やゲーム化する行為、一話完結形式の漫画の連載において同一のキャラクターを用いて新たな続編を創作する行為などが挙げられる。
翻案権は独占排他権であるから、翻案権者に無断で著作物を翻案する行為は、原則として翻案権の侵害となる。

今回のような漫画の映画化などの際には、漫画の翻案をするにあたって翻案をしたい者が、翻案権者(実際には、出版社が委任などによって管理を行っている)に許諾を得て、その際に対価が支払われるという仕組みとなっている。

映画の製作者側からすれば、原作料として支払う金額は少ないに越したことはないが、原作者とすれば、自分の原作が使われるのであるし、ましてその映画が大ヒットすれば自身もその恩恵を受けられるのも筋であると考えたいところである。
ただ、実際は、交渉が上手ではない作家や漫画家、著作権の管理を出版社等に任せきりにしている作家や漫画家の場合は、原作使用料も低額に抑えられているというのが現実である。

『海猿』等で知られる佐藤秀峰氏も、ヒット映画の『LIMIT OF LOVE 海猿』(『海猿』シリーズ2作目。興行収入71億円)の原作使用料は、250万円であったと明かしている。ただ、現在に関しては、原作使用料+成功報酬という契約にしており、「ヤマザキさんの60~70倍貰ってる」とのことである(氏のツイッターより)。

結局は、契約の話ということである。作家や漫画家がどのような契約を締結するか。
作家や漫画家が、自身の作品の翻案に関する交渉を弁護士に行ってもらうことまでするかはともかく、自分の権利をしっかりと主張できなければ、金額も安くされてしまうのも仕方がないのかもしれない。
他方、映画やドラマの「ネタ元」として、安い金額で漫画を安易に使っていれば、その文化は衰退しかねないともいえる。良質な作品は、適切に評価されなければならないからである。

今回のような事態になることを、作家、漫画家側が予防する一つの例として、以下のようなものがある。
例えば小説業界で言えば、人気作家である、大沢在昌、宮部みゆき、京極夏彦は、「大沢オフィス」に所属し、そこにマネジメントや著作権管理を行ってもらっている。このような形をとることで、作家自身が様々な交渉を直接行う必要性がなくなり、不相応な条件等で契約をまとめられるということにはなりにくくなる。また、翻案をしたい企業等にとっても、窓口がしっかりと確立するので、交渉しやすくなるであろう。このように、複数の作家を一つの会社がマネジメントをするというあり方は、「大沢オフィス」が作られた当時は、他に例を見ないタイプのものであった。しかし、今では、漫画業界等においても、これに似た仕組みは増えつつある。

今日では、書籍の電子化も一般化し、これからは作家や漫画家が、出版社や、第三者と様々な交渉を行う機会が増えていくのではないかと考えられる。
そのときに、間に入って契約のことをキチンと考えられ、窓口となる法務担当の人材が必要となるのではないか。

参考条文

著作権法
(翻訳権、翻案権等)
第二十七条  著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を専有する。

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