消費者庁・総務省、出会い系メール配信業者に措置命令を実施
2013/02/14 消費者取引関連法務, 特定電子メール法, その他

事案
◆ 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律の概要
同法は、迷惑メールを防止するための法律である(同法1条参照)。「特定電子メール」とは、広告・宣伝を目的として、営業活動として送信される電子メールをいう(同法2条2号参照)。これには、広告・宣伝目的のサイトに誘引するものや、SNSへの招待や懸賞当選の報告と装って広告・宣伝目的のサイトに誘引するものも含まれる。特定電子メールの送信は、原則としてあらかじめ同意した者についてのみ可能である(同法3条1号、オプトイン方式)。また、特定電子メールの送信者は、同意があった旨を記録しなければならない(同法3条2号)。そして、送信者は、送信者の氏名又は会社名、オプトアウト(受信拒否)の通知ができる旨、オプトアウトの通知を受け取るためのメールアドレス又はURL、苦情・問い合わせをするための送信者の住所・電話番号・メールアドレス・URL等の事項をメール本文に記載しなければならない(同法4条、表示義務)。これらの規定に違反した者については、電子メールの送信の方法の改善を求める措置命令がなされ(同法7条)、措置命令に従わなかった者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される(同法34条2号)。
受信者の意向を無視して、無差別かつ大量に一括して送信されるスパムメールは、企業にとっては広告費をかけずに短時間で大量送信でき都合がよく、1日当たり約1750億通が出回っており、迷惑メールとして社会問題化している。そのため、同法による迷惑メールの規制が設けられたが、営業の自由との関係でメール送信の禁止措置までの規制は設けられておらず、インターネット利用者は自分で迷惑メール対策をせざるを得ないというのが現状である。
◆ 事案の概要
同社は、出会い系サイト「drop」(http://drop-drop.me/)を運営している。同社については、ネット利用者が同サイトにログインしただけで自動的に会員登録がなされたり、さらに、会員が気になった女性の電話番号やメールアドレス個人情報を交換する際や会員登録を解除する際に400万円もの高額な金銭を要求したり、その悪質性が消費者センターに報告されていた。
同社は、平成24年3月20日から平成24年11月30日までに、ウェブサイト「drop」の広告又は宣伝を行う電子メールの送信に当たり、受信者の同意を得ていなかった。また、受信者から送信の同意を得た記録を保存していなかった。さらに、広告又は宣伝を行う電子メールの本文に、法に規定された事項(送信者の名称)を表示していなかった。これらの不作為が同法3条1号、2号、4条に違反するとして、消費者庁及び総務省は、平成25年2月13日に同法7条に基づく措置命令が行った。
コメント
「無縁社会」といわれ、人間関係が希薄化している現代社会において、男女の出会いを求める出会い系ビジネスは大きな収益を上げている。女性との出会いの無い男性の弱みに付け込むビジネススタイルのため、会社に登録している女性の個人情報を提供するに際して、時には数百万円に上る高額の報酬を得ることが可能である。このようなインターネットによる異性紹介事業は、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律施行規則」によって届出制となっている(同規則1条)。もっとも、人の弱みに付け込むというビジネスの性質上、許可制等の厳格な規制が必要ではないだろうか。
インターネットによる異性紹介事業を行う業者の多くは、電子メールによって営業活動を行う。電子メールによる広告は、その即時性・アクセスの容易さ・情報量の多さから、男性の性的羞恥心を過度に煽動するものといえる。このような営業活動は、人の弱みに付け込む悪質性を有する活動であるので、今後、営業の自由との調整をしつつ、厳格な規制を設けるべきであろう。
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参照条文
○特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 (略)
二 特定電子メール 電子メールの送信(国内にある電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)からの送 信又は国内にある電気通信設備への送信に限る。以下同じ。)をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう。
三~五 (略)
(特定電子メールの送信の制限)
第3条 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
一 あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者(電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。以下同じ。)に対し通知した者
二 前号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者
三 前二号に掲げるもののほか、当該特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者
四 前三号に掲げるもののほか、総務省令・内閣府令で定めるところにより自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)
2 前項第一号の通知を受けた者は、総務省令・内閣府令で定めるところにより特定電子メールの送信をするように求めがあったこと又は送信をすることに同意があったことを証する記録を保存しなければならない。
3 (略)
(表示義務)
第4条 送信者は、特定電子メールの送信に当たっては、総務省令・内閣府令で定めるところにより、その受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に次に掲げる事項(前条第3項ただし書の総務省令・内閣府令で定める場合においては、第二号に掲げる事項を除く。)が正しく表示されるようにしなければならない。
一 当該送信者(当該電子メールの送信につき送信委託者がいる場合は、当該送信者又は当該送信委託者のうち当該送信に責任を有する者)の氏名又は名称
二 前条第3項本文の通知を受けるための電子メールアドレス又は電気通信設備を識別するための文字、番号、記号その他の符号であって総務省令・内閣府令で定めるもの
三 その他総務省令・内閣府令で定める事項
(措置命令)
第7条 総務大臣及び内閣総理大臣(架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信に係る場合にあっては、総務大臣)は、送信者が一時に多数の者に対してする特定電子メールの送信その他の電子メールの送信につき、第3条若しくは第4条の規定を遵守していないと認める場合又は送信者情報を偽った電子メール若しくは架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をしたと認める場合において、電子メールの送受信上の支障を防止するため必要があると認めるときは、当該送信者(これらの電子メールに係る送信委託者が当該電子メールの送信に係る第3条第1項第一号又は第二号の通知の受領、同条第2項の記録の保存その他の当該電子メールの送信に係る業務の一部を行った場合であって、当該電子メールの送信につき、当該送信委託者の責めに帰すべき事由があると認められるときは、当該送信者及び当該送信委託者)に対し、電子メールの送信の方法の改善に関し必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
第34条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第5条の規定に違反した者
二 第7条の規定による命令(第3条第2項の規定による記録の保存に係るものを除く。)に違反した者
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