大王製紙前会長に6年求刑 東京地裁
2012/09/05 法務相談一般, 刑事法, メーカー

概要
カジノでの負債返済などに充てるため、いわき大王製紙など子会社7社から約55億円を無担保で借り入れ、損害を与えたとして、会社法違反(特別背任罪)に問われた大王製紙前会長・井川意高被告(48)の公判が5日、東京地裁(堀田真哉裁判長)で開かれ、結審した。
3月の初公判での冒頭陳述によると、被告は平成8、9年ごろからバカラ賭博を始め、19年ごろには1回あたりの負けは数千万~1億円にも上った。
自己資金が底を突き、返済に窮するようになると、資産管理会社や連結子会社の役員らに貸付を指示し、その承認決議を得たように取締役会の議事録を書き換えさせた。
7月の被告人質問で、被告は「関連会社なら言いやすいという気持ちがあった」「子会社役員達は無担保貸付を逆らえなかったと思う」と述べ、自身の立場を利用した指示であったことを認める旨の発言をした。
そして起訴内容を認め、医師から「ギャンブル依存症」との診断を受けたことを明らかにした上で、「金銭感覚が狂っていた。最後に返済すればいいという甘い考えだった」との反省の言葉を繰り返していた。
検察側は論告で「欲望のままにギャンブルにのめり込み、自分に逆らえない企業風土を利用して子会社役員に貸付を命じた」、「創業家出身を背景とする絶対的地位を悪用した身勝手極まりない犯行を行い、企業価値を著しく傷つけた」と被告を厳しく非難し、懲役6年を求刑した。
それに対し弁護側は、被告は全面的に起訴内容を認めており、被害回復がなされている点や、会社の経営に長年貢献してきた点を強調し、執行猶予付きの判決を求めた。
判決は、10月10日に言い渡される。
コメント
本件は、創業家出身のトップによる会社財産の私物化であり、その動機に酌量の余地はない。
だが、使途不明な多額の貸付を無担保で迫るなどのトップの暴走を感じつつも、なぜ誰もそれを止められなかったのだろうか。
本来トップの監督は他の役員に義務付けられているが、貸付を指示された関連会社の元役員は「指示を断れば左遷されると思った」と公判で証言しており、社内での監督機能は事実上全く機能していなかったことが伺える。
このような事態に対しては、利害関係を持たない社外の人間による監督が必須であるが、今年7月に提示された会社法改正案では、経済界の強い反発を考慮し、社外取締役の設置義務化は見送られたばかり。
経済界はその理由として、経営の自由度が制約されることや人選が難しいことなどを挙げているが、企業価値の維持のためには、そのような怠慢を述べている場合ではないだろう。
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