エネルギー政策意見聴取会問題からコンプライアンスを考える
2012/07/19 コンプライアンス, 民法・商法, その他

概要
政府が将来のエネルギー政策について国民から意見を聞く聴取会が15日に仙台市で開催されたが、抽選で選ばれた発言者に東北電力の役員が含まれていたことに対して批判が集中した。翌日の名古屋市開催の公聴会でも同様の事態が生じたことを受け、経済産業省は18日、公聴会から電力会社社員の意見表明を除外する方針を決め、こうした場に電力会社が組織的に社員に意見表明を促したり、応募させたりしないことの徹底を求める行政指導を行った。
まず、今回の意見聴取会の発言の仕組みを再確認する必要がある。今回の聴取会では、政府が示した2030年時点の原発依存度を0%、15%、20~25%とする三つの選択肢に関し、各選択肢毎に3人、計9人が発言する仕組みであった。電力会社社員の発言はいずれも3つ目の「20~25%」の選択肢に関する意見表明として為されたものである。今回の事態を受け、今後の発言者数は3人増の計12人とされ、増やす3人は最も希望者の多い0%への意見表明に充てられる予定である。
コメント
電力会社の発言を巡って想起されるのが、玄海原発(佐賀県)の運転再開を巡って九州電力が国主催の説明番組に賛成意見を投稿するよう子会社などに呼びかけていた問題である。この「やらせ」問題の発覚を受けて各電力会社はコンプライアンスの徹底を強化しているが、依然風当たりは強い。もっとも、電力会社が意見表明を禁じる内部通達を出せば、それは逆の意味での「やらせ」に当たるのではないか、との指摘もあり、大阪市の橋下市長はこの件に関し、「特定の意見だけ排除すると、偏った意見しか聴取出来なくなる」として政府の対応を批判している。
会社が社会の構成員として何らかの立場を表明することを迫られた場合に、「会社の見解」と「個人としての意見」はしばしば混同されがちである。今回、東北電力執行役員のケースに関しては「会社の意見」を述べる場面があった一方、中部電力社員のケースでは「個人的意見」としての意見表明が為されており、両者を同列に扱うことは必ずしも正しくない。何故なら、一般国民の意見表明の場で「会社」が意見を述べることはその趣旨に反するが、個人の立場で意見表明することさえも制限されるとすれば、それは表現の自由の制約に他ならないからである。
こうした点を踏まえ、意見集約の場(本件においては政府)が事前にその場を定める意義を明確にすることはもちろん重要であるが、企業の側としても対外的な意見表明に関してより一層の留意が求められるといえる。
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