【特集】第1回目 株主総会の招集通知について
2017/10/19   商事法務, 総会対応, 会社法

第1 はじめに

 こんにちは。企業法務ナビの企画編集部です。先月、今年行われた株主総会における株主からの議案に対する、大手信託銀行(三井住友、三菱UFJ、みずほ)及び生命保険会社(第一生命、明治安田生命、住友生命、日本生命)計7社の議決権行使状況が公表され、その内の4社が前年度に比べて議案への反対比率が上昇したことが話題となりました。また、今年の株主総会では、取締役・監査役の解任要求や配当決定機関の変更といった経営陣にとっては厳しい株主提案が相次ぎました。このように、株主総会で緊張感が高まる背景には、金融庁が制定した「責任ある機関投資家」の諸原則、いわゆる日本版スチュワードシップ・コード(SSコード)があるといえます。つまり、企業にとって株主総会の運営は以前に増して重要度が高まっているといえます。
 そこで、企業法務ナビでは、今月10日に、法務NAVIまとめにおいて、「2017年の株主総会の傾向」という記事を掲載し、今年の株主総会の傾向についてまとめました。さて、今回の特集記事は「株主総会における企業の対応」と題して全5回にわたって、実際に企業の法務担当者が株主総会を運営する上で、株主総会決議取消・無効及び不存在の確認訴訟を提起されないように、注意すべき点を見ていきたいと思います。第1回目の今回は、「株主総会の招集通知について」見ていきたいと思います。

2017年の株主総会の傾向(企業法務ナビ)

株主総会・議決権行使状況(毎日新聞)

株主総会「シャンシャン」から「緊張感ある対話の場に」(毎日新聞)

第2 招集通知とは

 招集通知は、株主総会を開催するにあたって始めに必要な手続です。株主に対して事前に株主総会の内容を通知することで、株主が総会に向けて十分な準備・検討をする時間を与える重要な意義を有します。招集通知の手続に問題があると、株主総会決議自体が取り消され、総会で取り決めたことが無に帰してしまうおそれすらあります。
 本稿では、そういった危険を避けるため、株主総会の招集通知について、その目的・手続の参考になる記事を紹介していきたいと思います。

第3 招集通知の目的

 招集通知の目的は、株主総会の構成員である株主に対して、総会開催の周知を図り、株主に事前準備の機会を与え、出席・議決権行使の機会を保証することにあります。

<参考記事>
株主総会招集通知の目的と対象となる株主(経営改善ナビ)

第4 招集通知を行う主体と招集通知の対象となる株主

1 主体
 招集通知の主体及びその方法は取締役会設置会社とそうでない会社で異なります。

(1) 取締役会設置会社
  ・取締役会(の決定に基づき代表取締役)が発送
  ・書面(または電磁的方法)による招集通知が必要

(2) 取締役会非設置会社
  ・各取締役が発送
  ・書面通知は不要、口頭や電話、メールでも可能

 なお、例外的に株主が招集を請求することもあります

<会社法297条第1項>
 総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を6箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
 
2 対象株主
 招集通知を必要とする株主は、会社が定款で定める基準日に株主名簿に記載・記録された株主です。
 反対に、株主が以下のような場合には当該株主には招集通知を要しません。

 ・議決権がない株式(完全無議決株式)を有する株主
 ・一部の時効を除き議決権のない株式(議決権制限株式)を有する株主
 ・その他株式の状態等により議決権を有しない株式
 (自己株式、単元未満株式、相互保有株式等)を有する株主
 ・所在不明株主

<参考記事>
株主総会の招集手続(ロア・ユナイテッド法律事務所)

第5 発送時期

 招集通知の発送時期は公開会社と公開会社でない会社とで異なります。

  公開会社:総会日の2週間前まで(発送または発信日を除く)
  非公開会社:総会日の1週間前まで(同上)

 もっとも、非公開会社でかつ取締役会非設置会社であれば、定款で定めることにより招集期間を短縮することができます。
 以下の会社は、定款によっても期間を短縮することができません。

 ・公開会社
 ・非公開会社で取締役会設置会社
 ・書面投票制度または電子投票制度を採用した場合

<参考記事>
株主総会の招集通知はいつまでに発送しなければならないか(汐留司法書士事務所)

第6 記載内容

 招集通知には、以下の事項を記載しなければなりません(法定記載事項)。

 ① 株主総会の日時及び場所
 ② 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
 ③ 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる旨
 ④ 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができる旨
 ⑤ 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

<参考記事>
株主総会の招集通知に記載すべきことは何ですか?(宮田総合法律事務所)

招集通知作成にあたっての留意点(経営改善ナビ)

報告事項のみの総会決議でも招集通知に記載しなければならないのか(月刊総務オンライン)

第7 招集通知を省略できるケース

 以上のように、株主総会開催にあたっては招集通知を発送することになりますが、例外的に、株主全員の同意がある場合には、招集通知手続を経ることなく株主総会を開催することができます。株主数の少ない中小企業やベンチャー企業では有効な手段です。

<参考記事>
定時株主総会の手続の流れと、省略のポイント(ビズベン!)

親族だけで運営する株式会社で、総会の招集通知はどうするか(legalus)

第8 おわりに

 招集通知は、株主総会を開催するにあたって重要な手続の一つですが、裁判例では招集通知手続に瑕疵があるとして株主総会が取り消されるケースも相当数あります。招集通知に漏れがあった、通知期間が不足していた、議案要領が不足していた、取締役会決議が欠けていたといった場合に、株主総会決議が取り消されているようです。
 総会決議取消しによって無駄な時間・コストがかからないよう、招集に際しては厳格なチェック体制を整えるなどして手続に瑕疵がないようにしておくべきでしょう。

<参考記事>
株主総会の招集手続違反まとめ(企業法務ナビ)

 次回は、特に株主の株主提案権行使の場面にフォーカスを当て、「株主提案権の行使について」を記事としてご紹介させていただきたいと思います。

 (文責: furuya)

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