障害者雇用に対する取組みまとめ
2017/09/22 労務法務, 労働法全般
1 はじめに
2.0%。これは、障害者雇用促進法によって定められた企業が達成しなければならない障害者雇用率の数値です。平成25年に同法が改正され、年々、障害者雇用に力を入れる企業が増えてきています。もっとも、全国で半数以上の企業がこの数値を達成することができていないという課題もあります。
障害者の雇用状況に改善が見られない場合、厚生労働省により企業名が公表されることとなっており、企業にとっては「障害者にやさしくない会社」「法律を守らない会社」というマイナスイメージがつくことで大きなデメリットになるといえます。企業においてはこのような事態を未然に防ぐことが必要になるでしょう。
本稿ではこのような障害者雇用に関する現状を踏まえ、地方公共団体や企業の取組みについてまとめることで、企業がよい形で世間に認知されていくための就業規則や個別の労働契約の改善方法を提示していきたいと思います。
<障害者雇用制度の概要については以下のまとめ記事を参照>
2 障害者雇用の現状
内閣府の発表した平成29年度の障害者白書によれば平成28年6月時点で障害者の実雇用率は1.92%、雇用者数も13年連続で過去最高を更新しており、企業の関心が高まっていることが分かります。改正障害者雇用促進法が平成28年4月より施行され、法定雇用率が2018年以降上がる予定であることも厚生労働省より発表されていることから、今後も雇用率は上がっていくことが予想されます。
他方で、障害者雇用率を支えているのは大企業が大半で、厚生労働省が発表したデータによると、平成27年6月時点で、従業員数1000人以上の企業では、障害者の実雇用率が2.08%、法定雇用率の達成割合が55%であるのに対し、1000人未満の企業では、実雇用率が2.0%未満、法定雇用率の達成割合は100~300人の規模で50.2%となっている他は45%未満であり、中小企業の障害者雇用についてはなお不十分な状況が続いているといえます。
また、発達障害がある人においては相談支援や当事者会活動よりも就労支援を必要とする割合が多いのが現状です。
以下では、このような状況に対して地方自治体や企業が障害者雇用に取り組んでいるかについて紹介したいと思います。
<官庁発表のデータはこちら>
3 地方自治体の取り組み
平成29年7月、東京都は、中小企業の障害者雇用に関する理解を深め、雇用の促進をしていくために、「中小企業の障害者雇用を促進するフェア」を開催しました。同フェアでは、大学教授や企業の人事担当者によるセミナー、障害者雇用支援機関及び障害者雇用に積極的な企業の紹介などが行われました。同フェアは平成27年、28年にも開催されており、今後も開催されていくと思われます。同様のイベントは福井県など全国の地方自治体で取り組まれています。
また、東京都をはじめ全国の都道府県で障害者雇用優良企業登録事業を行うなどして障害者雇用の拡大も図っています。企業にとっては、優良企業として表彰されたり、シンボルマークの使用が認められることで、対外的なアピールができるというメリットになります。
<東京都の取組みについてはこちらを参照>
2017年中小企業の障害者雇用を促進するフェア
東京都障害者雇用優良企業登録事業
4 企業の取り組み
地方自治体だけでなく、企業内においても積極的に障害者雇用のための活動を行っている企業は増えています。上記した障害者雇用優良企業として登録されている企業では、障害者ための相談員の配置や職場実習の受け入れを行うところが多いようです。その他、養護学校や障害者支援センターとの連携をとる、朝礼などにより安全や健康状態の確認をするといった制度を導入する企業も数多くあります。
また、ハローワーク等が開催する転職者向けの障害者採用セミナーが各都道府県で開催されており、それに参加することで障害者の雇用を図ろうとする企業も多いようです。
<企業の取組み例はこちらを参照>
「かながわ障害者雇用優良企業」の紹介
埼玉県障害者雇用優良事業所の紹介
障害者の説明会・セミナー一覧(合説ドットコム)
5 おわりに
以上のように、障害者雇用に向けて、地方自治体に限らず企業においても積極的な取組みが進められています。活動においては、健常者のフォロー、ライン作業など障害者に見合った仕事の供給といったところに重点が置かれているようです。
大企業だけでなく中小企業も参加しているセミナーの開催も多くなされており、障害者雇用に向けた動きは今後より進んでいくことになるでしょう。
法定雇用率である2.0%はすべての企業において達成されることが求められ、企業においては、障害者雇用への取組みを積極的に行うことが期待されます。障害者雇用優良企業として各都道府県に登録されている企業は大半が障害者雇用率4・0%を超えており、100.0%を超える企業もあります。
「障害者にやさしくない会社」ではなく「障害者にやさしい会社」として世間に認知されるために、企業においては各都道府県における障害者雇用優良企業の取組みを参照するなどして、就業規則や個別の労働契約を通して職場環境・業務内容の改善や健常者の障害者に対する対応、採用における障害者の割合などについて検討してみてはいかがでしょうか。
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