役員・従業員の引き抜きを防止するにはまとめ
2016/11/30   労務法務, 危機管理, 不正競争防止法, 労働法全般, その他

はじめに

 ドイツのアウディは11月24日、技術開発部門の取締役に、ピーター・メルテンス氏を起用すると発表しました。
ピーター・メルテンス氏は、最近までアウディと競合するスウェーデンの高級車メーカー、ボルボカーズの研究開発担当の上級副社長を務めていました。
 このように、優秀な人材を集めるために同業他社から引き抜きがある場合があります。そこで今回は引き抜きの対策についてまとめてみます。

引き抜きのケース

 引き抜きのケースとして主なものは
①退職した役員・従業員が起業・転職して、前職の他の従業員に対して転職を働きかける場合
②在職中の役員・従業員が起業・転職して、前職の他の従業員に対して転職を働きかける場合
③企業などの第三者が、他企業の従業員に対して転職を働きかける場合
があります。
社員の引き抜き(出典 御器谷法律相談所)

誓約書で引き抜きを防ぐには

 引き抜き行為への対策としては、事前に役員・従業員から競業他社に就職しない・競業の事業を起こさないという誓約書を提出させることが考えられます。
秘密保持・競業避止等に関する誓約書(PDF)(出典  弁護士法人 デイライト法律事務所)
 まず、社員の転職は、憲法第22条1項で、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定していることから、従業員が転職すること自体は、「職業選択の自由」により認められているので、会社が阻止することは原則として許されません。
 しかし、従業員から、退職後も一定期間は同業者に就職することや、同業で起業することを禁止する旨の誓約書を取り付けている企業も多いと思います。このような対策も一定程度有効ではあるのですが、「一定期間は同業者に就職したり、同業で起業したりしない旨の約束」の条項が入っている誓約書は職業選択の自由を不当に制限するものとして、裁判所で効力を認められるとは限らないというところに難点があります。
 中には6か月で無効にされた事例もあります。ライバル企業の社員の引き抜き、どこまで許される? (出典 YOMIURI ONLINE)
 この点に関してはリーディングケースがあるようです。退職した従業員による競業をいかに防ぐか (出典 近江法律事務所)
 そこで誓約書などを作成する際には裁判所で効力を認められるような誓約書の作成が大事になります。従業員による引き抜き行為を防ぐ退職時誓約書の作り方 (出典 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所)

就業規則で引き抜きを防ぐには

 就業規則等で従業員の同業他社への引き抜きを防ぐ規定を設けるときに気をつける点に関しては、裁判所の傾向では以下の3点です。
①競業避止を必要とする正当な理由の存在
②競業が禁止される期間、地域、対象が合理的範囲にとどまっていること
③代償措置の有無
 詳しい内容はこちら 会社の元従業員による、取引先・従業員の引抜行為への対処法(出典 こすぎ法律事務所)

引き抜き行為が始まってしまった場合の対応策

 引き抜き行為に気付いたら、勧誘を受けた従業員に対する聞き取り調査を実施し、できるかぎり早い段階で内容証明郵便等で引き抜き行為を行った者に警告します。
調査にあたってのポイントは、以下の4つです。
①誰が引き抜き行為を行っているのか?1人で行っているのか、何人かで行っているのか?
②従業員に転職を勧誘するにあたってどのような勧誘フレーズを使っているのか?会社の評判を下げるような虚偽の事実を告げて勧誘を行っていないか?
③何人の従業員に転職の勧誘がされたのか?
④引き抜き行為が行われたのはいつからいつまでか?引き抜きが行われたのは、その者が在職中か。それとも退職した後か。
退職する従業員による引き抜き行為について調査する方法(出典 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所)

損害賠償請求するには

 企業は引き抜き行為を行った役員・従業員等に対し、損害賠償請求ができることがあります。
引き抜き行為について、裁判所は「単なる転職の勧誘の範囲を超えて社会的相当性を逸脱した方法で従業員を引き抜いた場合・・・引き抜き行為によって同業他社に生じた損害を賠償する義務があるというべきである。」としています。
 さきほどの調査にあたっての4つのポイントは、損害賠償請求についての判断基準にも考慮されるポイントです。
 こちらに引き抜きのケースごとに参考になる判例が記載されています。ライバル企業の社員の引き抜き、どこまで許される?(出典 YOMIURI ONLINE)

コメント

 せっかく自社でコストをかけて育てた優秀な人材を他社に流失させてしまうのは損失ですし、引き抜かれた先で機密情報や顧客情報なども流失し、取引先を奪われ、損害を被るかもしれません。それを考えると引き抜き防止対策はしっかりしておく必要があるように思います。

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