不当労働行為まとめ
2017/01/18   労務法務, 労働法全般, その他

1.はじめに

 NHKが、受信料の集金スタッフでつくる日本放送受信料労働組合との団体交渉に応じなかったとの疑いを持たれていたことから、2016年12月22日に中央労働委員会がNHKのその団体交渉の拒否に不当労働行為を認定したことが明らかになりました。そこで、今回は不当労働行為についてまとめます。
本件について 日本経済新聞

2.不当労働行為

 不当労働行為とは、憲法28条で保障された労働三権(団結権・団体交渉権・争議権)の実効性を確保するために、労働組合法上使用者が行ってはならない行為のことをいいます(労働組合法7条)。
憲法28条 日本国憲法逐条解説
労働組合法
不当労働行為について 厚生労働省・中央委員会

3.不当労働行為の種類

 労働組合法7条で禁止されている不当労働行為には、以下の種類があります。
・組合員であることを理由とする解雇その他の不利益取扱い(1号)
 組合員であることや労働組合に加入・結成すること、労働組合の正当な行為をしたことを理由に、解雇・懲戒・配点・出向など様々な不利益取り扱いをすることです。
・黄犬契約(1号)
 労働組合に加入する、あるいは脱退させることを雇用条件とすることです。
・正当な理由のない団体交渉の拒否(2号)
 何が正当な理由に当たるかは、具体的な事案に即して判断されます。後述に、正当な理由と認められた例をまとめてあります。
・労働組合の運営等に対する支配介入(3号)
 労働組合の結成・運営に関し使用者が介入することです。
・経費援助(3号)
 労働組合の諸活動に必要なあらゆる経費について援助することです。ただし、最小限の広さの組合事務所の供与などの例外もあります。
・労働委員会への申立て等を理由とする不利益取り扱いの禁止(4号)
 不当労働行為について、労働者は労働委員会に救済の申立てを行うことができますが、それについて解雇などの不利益取り扱いをすることです。
不当労働行為の種類 労働組合対策相談室

 上記の不当労働行為を行った場合、不法行為に当たるとして損害賠償請求をされる場合もあります。以下はその一例です。
※労働組合である原告が,被告らに対し,被告らが被告aが代表者である被告会社の従業員で原告の組合員であった者らに対して不当労働行為を行い,これにより原告が損害を被ったと主張し,民法709条及び会社法429条による損害賠償請求権に基づき,330万円及びこれに対する不法行為後の日である平成23年2月7日から支払済みまで民法所定の年5分の遅延損害金の支払を求める事案で、110万円の請求を認容されたました。
広島地裁平成26年10月30日判決 裁判所判例Watch

4.正当な理由のある団体交渉の拒否

 団体交渉を拒否することに正当な理由があるとされた例として以下のものがあります。
・労働組合の単なる協議機関や連絡機関にすぎない組織からの団体交渉を拒絶した場合
・肉体的な限界を超えるほど長時間にわたる団交を強要する場合に団体交渉を拒否した場合
・組合交渉員が会社に対し暴言を吐き続けることから団体交渉を中断し続行を拒絶した場合
・会社役員の病気などにより、差し支えが発生したことから団体交渉開催日時の延期を求め、結果的に当初に予定された団交を拒絶してしまった場合
正当な事由について 労働組合対策相談室

5.不当労働行為に対する救済手続き

 不当労働行為に対し、労働者がその行為があった日から1年以内に労働委員会に救済の申立てが行われる可能性があります(労働組合法27条)。
不法労働行為救済制度の概要 東京都労働委員会
不法労働行為事件の審査の流れ 厚生労働省・中央労働委員会
 また、確定した(再審査の申立てや裁判所に取消訴訟を提起しなかった場合)救済の命令に従わない使用者は過料に処されます(同法32条後段、50万円以下の過料)。
不当労働行為のリスク 弁護士法人ベリーベスト法律事務所
 上記の行政上の救済手続きのほかに、司法上の救済手続きとして裁判所に民事訴訟を提起することも考えられます。
司法上の救済について エヌ・ジェイ出版販売株式会社
 上述のように不当労働行為が不法行為に当たるとして損害賠償請求の訴訟をされる可能性があり、団体交渉の拒絶した場合は、団体交渉の地位を求める確認請求・仮処分をされる可能性があります。
不法行為のリスク 弁護士法人ベリーベスト法律事務所(上記の同法律事務所のものと同じ)
 不法労働行為をした場合は、以上のような労働委員会や裁判所の関与を覚悟しなければなりません。

6.終わりに

 以上のとおり、不当労働行為には様々な類型がありますのでこれに該当しないように事前に確認しておくことが大事です。そして、合わせて労働委員会や裁判所が関与してきた場合の具体的な流れも確認しておくことで、実際に労働者がそれらに救済を申立てをしたとしても慌てずに対処できるかもしれません。

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