契約電子化のメリット・デメリットについて
2018/09/28   契約法務, 民法・商法

1 はじめに

 電子契約サービスの「ホームズ」を運営するリグシーは米最大手のドキュサインと提携し、海外企業に契約の締結依頼を配信できる国際サービスを開始します。契約をweb上で行うサービスは様々登場していますが、「紙に印鑑」の文化が根付く日本企業にとっては、電子契約への移行は心理的なハードルが高く、普及には至っていないというのが現状です。そこで本稿は、契約に携わる法務部員の皆様において、電子契約を導入するか否かを考える際の指標となるべく、契約電子化のメリットとデメリットをお伝えしようと思います。

●THE BRIDGE―法務系クラウドAIサービス「Holmes(ホームズ)」提供のリグシー、500 Startups Japanから数千万円を調達

2 契約電子化のメリット

①費用節約
 多くの企業で、契約を締結した場合、契約は契約書という形にまとめられ、2通作成されて相互に保有することになるかと思います。契約書の送付には最低でも数百円の郵便代がかかり、簡易書留や内容証明などのサービスを用いる場合、さらに費用がかかります。1回の郵送には数百円程度の費用しかかからなくても、長期的に見ると、多大な費用となってしまいます。電子契約にした場合、郵便代がかかりません。
 契約を契約書としてまとめた場合、印紙税を納入し、印紙を貼付する必要があります。企業間での契約は経済的利益があるものと推定されています。税金を払うことで、法的な問題が起きた際には国が用意した裁判などの制度を利用し、国に対処してもらうという趣旨のものであるようです。印紙が必要な契約書は国税庁発行の「印紙税額の一覧表」に載っており、不動産売買契約書は1号文書、継続的取引に関する契約書は7号文書等と決まっています。契約の類型によって印紙代は変わってきますが、1号文書の場合200円から60万円まで、7号文書は一律4000円となっています。取引額によって印紙税は上がっていくため、企業にとっては一定程度の負担になるかと思います。印紙税法上、電子契約書の送付は課税対象の文書を交付したという扱いにならないため、印紙代を節約することができます。

●MAG BOXIL―契約書|印紙の必要性とは?印紙税一覧・コストカット方法を紹介

●国税庁HPー請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について

②保存・検索の簡易化、業務の効率化
 紙媒体で保存する場合、保存のためのバインダーファイルを用意し、ファイルの保管場所を決めておく必要があります。そこにはファイル代・場所等決定の時間等のコストがかかります。また、以前締結した契約を確認したい場合、どのファイルに入れているのかを思い出し、契約書を探し出すということが必要になります。電子契約にした場合、保存のためのスペースが空き、関連語句で検索することで、目当ての契約書をすぐに探し出すことができます。
 契約書を探す時間を短縮できれば、業務をより効率的に進めていくことができるかと思います。以前他社と締結した契約と同種の契約を他社と締結する必要が出てきた場合、以前の契約書を検索することで雛形として利用でき、業務の時短につながります。契約書審査の状況や先方とのやり取りについても保管できるため、当時の担当者にヒアリングをする必要もなくなり、よりスムーズに業務を遂行できると考えられます。

3 電子契約化のデメリット

①心理的な抵抗感・説明の手間
 日本には「契約は契約書に印鑑を押して成立する」という観念が強く残っているため、契約電子化への移行に心理的な抵抗感があるということもありえます。電子契約に移行するためにはまず経営陣に対する説得が必要です。会社としては、いざ訴訟になった際、契約書を証拠として用いることができるかどうかに最大の関心があることかと思います。この点につき、電子署名法3条には「…本人による電子署名…がおこなわれているときは、真正に成立したものと推定する」という規定があります。電子契約書にも証拠能力があることを説明すると、納得が得やすくなるかもしれません。
 契約は相手方があってのことなので、相手方の了承も得る必要があります。この点についても、契約時に相手方の法務担当者に確認しておくと良いでしょう。

●NS Solutions―電子署名の証拠力

②導入までの手間
 契約を電子化する場合、押印に代わるものとして電子証明書を取得する必要があります。電子証明書を取得するためには認証局に問い合わせ、所定のソフトを使って必要事項を記入するという手間が発生します。

●e-gov電子政府の総合窓口ー電子証明書の取得

4 今後の実務について

 契約の電子化にはメリットとデメリットがあります。どちらの影響が大きいかを法務部内で検討をし、導入するか否かを決定します。最初から最後まで自社で行うこともできますが、契約電子化を手伝う企業やサービスを利用するのも1つの手段です。企業・サービスにも様々なものがあるので、それぞれの内容・メリット・デメリットを比較し、自社の希望に合うものを選ぶと良いでしょう。

【その他参考サイト】
文書管理お役立ちブログー電子契約とは?4つのメリットを解説
            電子契約のデメリットはあるのか

電子契約のすすめ 徹底比較ガイドサイト―電子契約のメリット・デメリット

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