国際売買取引の流れまとめ
2017/05/16   海外法務, 外国法, その他

はじめに

国際化が進む昨今ではグローバルな売買取引も増大しており、国際的な売買契約を扱われる法務担当者の方が多いのではないかと思います。そこで今回は、国際売買手続きの全体像についてまとめてみました。
貿易の流れ(JETRO)
貿易実務の流れ(JETRO)

取引先の選定、契約交渉・締結

・規制対象、関税額の確認
輸入者はまず購入する商品を決定し、商品が国内の各種法令の規制対象になるのか、関税が幾らかかるのかを確認します。
国際売買では当事者の国が異なることから法制度の違いに注意が必要です。国によってはライセンスが必要であったり、通関できない事態も生じえます。そのため、自国の法制度のみならず、相手国の法制度もしっかりと確認しておきましょう。
・カントリーリスク
特に発展途上国との取引においては、戦争、内乱、政治体制などの変更により、輸出入や為替送金の停止などの事態に陥るリスク、いわゆるカントリーリスクが想定されます。カントリーリスクを回避するためには、事前に市場調査を行ったり、貿易保険で対処しましょう。
・信用調査
そして、取引先の選定段階では信用調査が行われます。相手国が他国にいるため、相手方の信用度を測りづらいという特性があります(企業信用リスク)。商業興信所への調査依頼、取引銀行への調査依頼、同業者への問い合わせ等の方法を利用して相手方の信用度を調査します。
調査項目である① Character (誠実性、経営陣の能力など)② Capital (資本力や財政状態など)③ Capacity (生産力や営業能力など)④ Conditions (相手国の政治・経済情勢など)のいわゆる4Cは確認しておきましょう。
誠実性についての評価を誤れば、後のトラブルの危険性は高くなるでしょうし、財務状況などの評価を誤れば、不払いなどの資金負担リスクが増えます。様々なリスクを回避するために信用調査は非常に重要です。
・交渉と契約締結
そして交渉段階では、品質条件、数量条件、貨物の受け渡し条件などが取り決められます。定められた内容を契約書に盛り込んでいきます。国際売買契約では、当事者の国が違うという特徴から誤解や認識違いなどの意思疎通面でのリスクが生じる危険があります。そのため、交渉段階ではやり取りをメールやFAXなどの文書でお互いにしっかり確認することが重要です。そして、交渉結果を全て含めた契約書を作成するように心がけましょう。
取引相手先の信用状態を調べる「信用調査」とは?
売買契約書の「記載事項」についてまとめてみました

信用状に関する手続

・隔地取引によるリスク
国際売買では、商品受け取りと代金支払いとの間に時間差が生じやすいのも特徴です。そのため、前払いの場合には輸入者が商品を入手できないリスク、後払いには輸出者が代金を回収できないリスクを負うことになります。このようなリスクを回避する策が信用状です。
・信用状とは
信用状(L/C)は、輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)が、商品代金の受取人である輸出者に対して、輸出者が信用状条件通りの書類を呈示することを条件に、輸入者に代わって、代金の支払いを確約した保証状のことを言います。
・信用状に関わる手続
信用状取引の場合、輸入者は信用状開設依頼書を作成し、取引銀行に信用状の発行を依頼します。取引銀行は信用状を発行すると輸出地銀行に送付し、輸出地銀行から輸出者に通知されます。信用状取引では、記載されている内容どおりに書類を提出し輸出しなければ、商品代金を支払ってもらえません。そのため、輸出者は通知された信用状について内容をしっかり確認しておく必要があります。
「信用状(L/C)」取引における輸出入者と銀行の関係を理解しよう

船積書類の準備、船積通知等、貨物海上保険

・船積書類の準備、船積通知等
輸出者は船積書類を作成します。船積書類は船荷証券、インボイス、パッキングリスト、保険証券、原産地証明書等の書類の総称です。インボイス(送り状)は貨物の明細書、代金の請求書、貨物の納品書の3つの役割を持つ書類、パッキングリストは梱包の状態や重量、サイズ等を記載した書類です。また、輸出者は船便の予約(船腹予約)を行い、貨物を出荷する船便・航空便が確定したら、輸入者へ船積通知をします。
「そもそも、船積書類って何が含まれるの?」
・貨物海上保険
国際売買では輸送距離が長いために、輸送中の貨物損害のリスクが高いのも特徴です。輸送中の貨物損害を避けるための方策は不可欠です。インコタームズを利用する場合にはその内容にしたがって、輸出者又は輸入者は海上保険をかけるべく、保険会社へ貨物海上保険を申し込まなければなりません。

保税地域への搬入手続

・輸出通関手続き
インコタームズに沿った場合、通関手続きを行うのはEXW条件以外では輸出者になります。船積依頼書(S/I)、インボイス、パッキングリストなどの必要書類を揃えたうえで、保税地域へ商品が搬入されます。
・輸出申告書の作成
その後、船積依頼書(S/I)やインボイス、パッキングリスト等をもとに貨物の状態や数量などを確認し、輸出申告書(E/D)を作成します。E/Dを作成したら輸出申告手続を行っていきます。近年の貨物通関手続きはNACCSというシステムを使った電子手続でなされます。
・輸出許可
書類と申告手続きに問題が無ければ、輸出許可がなされます。場合によっては税関から輸出通関時に貨物の現物検査を受けることがあります。
「輸出通関手続き」はどのように行われているの!?

船積み手続

通関手続きが終了すると、今度は船会社と連携した船積み手続に移ります。
・B/Iの提出
船積み手続も必要な書類を作成し船会社に提出するところから始まります。船荷証券(B/L)の元となるB/L Instruction(B/I)を作成します。必要な日時までに必要書類を用意しておくことが必要です。
・搬入、船積み
次に、船会社の指示のもと、コンテナヤード等の指定場所に輸出貨物を搬入します。搬入が終了すると船会社から船荷証券(B/L: Bill of Lading)が発行されます。B/Lは所持人が貨物所有者となる有価証券のため、取扱いに注意しましょう
フォワーダーが「船積み手続き」でしていることとは?

決済

信用状取引では船積書類等を輸出地銀行に提出し、為替手形を振り出すことで代金の支払いを受け取ります。輸出地銀行は船積書類と為替手形を輸入地銀行に送付し、銀行決済がなされます。輸入者は為替手形に対して支払いをすることで、船荷証券を受け取ることができます。
「船荷証券(B/L)」の記載内容はじっくり確認!

貨物到着案内(Arrival Notice : A/N)

船の到着が近づくと、船会社は貨物到着案内を送付します。送付先は船荷証券に記載された通知先です。通知された貨物が積まれた船の入港日を把握し、輸入通関手続きなどの必要な手続に取り掛かりましょう。

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