従業員が裁判員に選任されたときの企業対応まとめ
2017/03/14 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
昨年5月、音楽活動をしていた冨田真由さん(21)がファンの男に刺されて重傷を負った事件で、今年2月28日、殺人未遂などの罪に問われた無職岩埼(いわざき、現姓・岩崎)友宏被告人(28)の裁判員裁判の判決が行われました。
裁判員裁判への参加が裁判員の心身ともに大きな負担となることは、これまでに報道されている裁判員経験者の言葉からも伝えられているところです。それでは、従業員が裁判員に選ばれた場合、法務に携わる方はどのような対応が求められるでしょうか。裁判員裁判が導入されて8年足らずが経過し、各社とも就業規則に則った運用がなされているでしょうが、法務に携わる方は再度確認しておく必要があるでしょう。
参加辞退
従業員が裁判員に選ばれた場合、会社は従業員に裁判員を辞退してもらうことはできるでしょうか。
まず、裁判員に選ばれると基本的に辞退はできないのですが、辞退できる場合として「その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。」(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第16条8号ハ)があります。これは、単に仕事が忙しいというだけではなく、「とても重要な仕事があり、ご自身が処理しなければ、事業に著しい損害が生じる場合」や、「裁判員になることにより自分自身やまわりの人に経済上の重大な不利益が生じる場合」でなければなりません。これらに該当するかは、裁判員として職務に従事する期間、事業所の規模、担当職務についての代替性、予定される仕事の日時を変更できる可能性、裁判員として参加することによる事業への影響などが考慮されることになります。
最高裁判所のQ&A
そして、従業員が上記の事由に該当し辞退できる場合であっても、会社は従業員に裁判員を辞退するように業務命令を出すことはできません。労働基準法第7条本文には「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。」と定められており、ここにいう「公の職務」には、裁判員としての職務もあたるとされているからです。会社としては、従業員が裁判員を辞退したいと思っているのであればともかく、従業員が参加意思を見せている場合には裁判員を辞退してもらうことはできないのです。
近江法律事務所HP
参加中の給与
それでは、従業員が裁判員裁判に参加する場合、会社は従業員にその間も給与を支払う必要はあるでしょうか。
現在、法律上裁判員裁判への参加に対して給与を支払うことを定めた規定はありません。そのため、給与を支払うかどうかは各会社ごとに決めることができます。また、裁判員には裁判所から日当が支払われるのですが、これは裁判所が「職務を行うに当たって生じる損害(例えば,裁判所に来るための諸雑費や一時保育料等の出費,収入の減少など)の一部を補償するもの」として支払っているものであり、無給である場合の補償の側面をもつともいえます。
西村社会保険労務士事務所HP
近江法律事務所HP
参加を理由とする解雇
従業員が裁判員裁判に参加した場合、会社はその従業員は解雇することはできるでしょうか。
裁判員に選ばれると裁判員裁判に参加するために必要となる休暇をとることができます(労働基準法第7条)。そして、裁判員としての職務を全うするために仕事を休んだ場合、それを解雇などの不利益な扱いをする理由としてはいけません(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第100条)。このため、会社が裁判員裁判に参加した従業員を参加を理由に解雇することはできません。
最高裁判所HP
まとめ
いかがだったでしょうか。裁判員裁判が導入された当時に裁判員裁判への対応のために就業規則の変更に尽力した法務の方もいるでしょうが、8年も経過するとそれに携わっていない法務の方もいるでしょう。そのような方は自社の就業規則を見てみるなど自社が裁判員に選ばれた従業員にどのような対応をしているか、これを機に確認し理解を深めておきましょう。
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