監視委が「スカイ・プレミアム」に差止、金融商品取引業について
2021/09/22   金融法務, 金融商品取引法, その他

はじめに

証券取引等監視委員会は17日、シンガポールの法人「スカイ・プレミアム・インターナショナル」が無登録で投資仲介を行っているとして、仲介等の差し止めを東京地裁に申し立てていたことがわかりました。これまでに約1200億円を集金していたとのことです。今回は金商法が規制する金融商品取引業について見ていきます。

 

事案の概要

 監視委の発表などによりますと、シンガポールの法人であるスカイプレミアムは金商法所定の登録を受けずに、日本国内で約500人のエージェントを介して一般投資家を対象に投資セミナーを開催するなどして「LION PREMIUM」と称する商品の勧誘を行っていたとされます。同法人は当該商品の勧誘に併せて長期間にわたり投資一任契約の締結の媒介も行っており、これまでに約2万2000人の一般投資家から約1200億円を集めていたとのことです。監視委の調査では、同法人の投資資金運用・管理の実態が掴めず、また資金の流れなどが顧客への説明とは異なる事実も判明しているなどとして東京地裁に差し止めを申し立てました。

 

金商法による規制

 金融商品取引法では、株式などの有価証券やデリバティブの販売、勧誘、投資助言などの2条8項に規定する行為を業として行う場合は、金融商品取引業として内閣総理大臣(財務局)の登録を受ける必要があるとしております(29条)。これに違反して無登録で金融商品取引業を行った場合、罰則として5年以下の懲役、500万円以下の罰金またはこれらの併科となっております(197条の2)。監視委は違反行為の禁止および停止命令を裁判所に申し立てることができ(192条1項)、またそのための調査を行うことができます(187条1項)。

 

各種金融商品取引業

(1)第一種金融商品取引業

 第一種金融商品取引業は、株式や社債などの金融商品の販売や勧誘、顧客資産の管理業務を行います。証券会社や外国為替証拠金取引業者(FX)が典型例と言えます。第一種金融商品取引業者は株式会社である必要があり、最低資本金は5000万円とされ、自己資本規制や純資産額規制などがあり登録要件は厳しくなっております。

(2)第二種金融商品取引業者

 第二種金融商品取引業は抵当証券や外国投資信託の受益証券、集団投資スキーム、信託受益権などに2条2項に規定する有価証券の販売や勧誘を行います。ファンドの販売業者などが典型例です。第一種と異なり株式会社である必要はありませんが、最低資本金1000万円、営業保証金1000万円が必要となります。

(3)投資運用業

 投資運用業は金融商品等に投資し運用することを業として行います。投資家やファンドから集めた資金を自らの判断で運用します。こちらも第一種と同様に株式会社である必要があり、最低資本金も5000万円となっております。500万円の純資産額要件はありますが、自己資本規制はありません。

(4)投資助言・代理業

 投資助言・代理業は投資顧問契約を締結して助言を行ったり、投資顧問契約や投資一任契約の代理や媒介を行います。投資運用業と異なり投資判断はあくまで顧客が行います。登録要件は特にありません。

 

登録拒否事由

 金商法29条の4では金融商品取引業の登録を拒否しなければならない場合が規定されております。具体的には過去に登録を取り消されてから5年を経過しない場合、金融関連犯罪で罰金刑の執行を受けてから5年を経過しない場合、他に公益に反する事業を行っている場合などが挙げられております。また金融商品取引業を適格に遂行するに足りる人的構成を有しない場合も拒否事由となっております。

 

コメント

 本件でスカイプレミアムは日本国内の一般投資家を対象に、投資一任契約であるLION
PREMIUMの勧誘や締結の媒介を行っているとされます。これらは金商法の投資助言・代理業に該当し無登録で行うと違法となります。監視委は東京地裁に業務の禁止および停止命令の申し立てと公表を行っております。以上のように日本国内で金融商品取引業を行うに際しては金商法に基づく登録が必要です。証券会社やFX業者などのわかりやすい例だけでなく、投資の助言や代理を行う場合でも同様です。また各種取引業ごとに登録要件も異なっており、かなり厳格なものもあります。これらの事業を検討している場合には、専門家などと相談の上、その要件や拒否事由などを把握しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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