公取委がマツダに勧告、下請法の利益提供要請について
2021/03/25 コンプライアンス, 下請法, その他

はじめに
自動車大手「マツダ」(広島県)が下請け業者に手数料名目で計約5100万円を支払わせていたとして公正取引委員会は19日、下請法違反で再発防止を勧告していたことがわかりました。こうした行為は昭和50年代から続いていたとのことです。今回は下請法が規定する禁止行為について見直していきます。
事案の概要
公取委の発表によりますと、コイル状に加工した鋼鉄やボルト、ナット等の自動車部品の製造を委託している資本金3億円以下の下請事業者に対し、平成30年11月から令和元年10月までの間に総額5112万3981円を提供させたとされます。同社は提供させる金銭の算出根拠や使途について明らかにせず「手数料」として同社が指定する金融機関講座に振り込ませ振込手数料も支払わせていたとのことです。同社はこれら金銭の提供に対し何らの給付や役務提供を行わず、自社の事業に関する取引の支払い等に充てていたとされます。
下請法による規制
下請法の規制については以前に取り上げましたがここでも簡単に触れていきます。下請法が適用されるのは製造委託、役務提供委託等の場合、親事業者側の資本金が3億円超で下請事業者側が3億円以下、または親事業者側の資本金が1000万円超~3億円以下で下請事業者側が1000万円以下となります(2条1項~8項)。親事業者は書面の交付義務(3条)、書類の作成保存義務(5条)、代金支払い期日を定める義務(2条の2)、遅延利息支払義務(4条の2)を負い、さらに以下の禁止事項が規定されております。
親事業者の禁止事項
下請法4条では1項各号から2項4号まで11項目におよぶ禁止事項が規定されております。受領拒否、下請代金の支払い遅延、代金減額、返品、買いたたき、購入利用強制、報復措置、有償支払い原材料等の対価の早期決済、割引困難な手形の交付、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しが禁止されております。公取委のガイドラインによりますと、不当な経済上の利益提供要請とは、協賛金、協力金等の名目のいかんを問わず、下請代金の支払いとは独立して行われる金銭・役務の提供を要求することを言うとされます。経済上の利益提供であっても、親事業者だけでなく、委託物の販促など下請事業者にも利益となり、またその範囲内で自由な意思により提供された場合には禁止事項に該当しないとされます。
違反した場合の措置
上記書面の交付義務や書類の作成・保存義務に違反した場合には罰則として50万円以下の罰金が規定されております(10条)。また公取委や中小企業庁は必要と認めるときは事業者に取引に関する報告をさせたり立入検査や帳簿検査を行うことができ(9条)、また下請代金や遅延利息の支払い、不利益な取り扱いの是正など必要な措置をとることを勧告することができます(7条)。
コメント
本件でマツダは自動車部品等を納入している下請事業者に対し「手数料」の名目で総額約5100万円を支払わせていたとされます。これに対する対価的な給付や役務は何ら提供されておらず、自社の事業に充てられていたとされます。下請事業者に利益となるものではなく、また自由意思により提供されたものにも該当しないことから「不当な経済上の利益の提供要請」と判断されたものと考えられます。以上のように経済上立場の強い親事業者は下請事業者を使用する際、様々な義務は禁止事項が定められております。業界では慣例となっているものであっても、一方的に金銭や役務の提供を求める行為は原則として違法となります。今一度下請事業者との取引状況を確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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