東京ドーム株主が選任請求へ、総会検査役について
2020/11/16   商事法務, 総会対応, 会社法, その他

はじめに

東京ドームは11日、12月17日に開催を予定している臨時株主総会に総会検査役の選任を東京地裁に申し立てたと発表しました。株主から現経営陣の退陣を求められており、手続きの適法性調査が行われます。今回は総会検査役について見直していきます。

事案の概要

 報道などによりますと、東京ドームの大株主である香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」は現経営陣である長岡社長ら取締役3人の解任案を提出しており、12月17日に臨時株主総会が開催される予定とされます。現経営陣側は同ファンドによる解任案については反対の立場を表明しており、現在の取締役会が引き続き経営に当たることが最善であるとしております。また同臨時株主総会に先立ち、本総会の招集手続きおよび決議方法に問題がないかを調査させるため11月11日付で東京地裁に総会検査役の選任請求を行ったとのことです。

総会検査役

 総会検査役とは、株主総会の招集手続きや決議方法を調査するために裁判所に選任された者を言います(会社法306条1項)。株主総会を招集するにはまず取締役会決議で決定し、一定の日時までに株主に招集通知および添付書類を送付します。場合によっては株主提案がなされる場合もありその対応も必要です。そして決議についても議事運営や定足数、委任状の扱い、出席株主の資格や議決権数など様々な項目があり、それらに不備があれば決議取消の訴えが提起されることもありえます(831条)。それらを未然に防ぐ、あるいはその訴えを提起するために予め証拠保全をするといった目的で総会検査役が利用されることとなります。

選任申立方法

 総会検査役の選任請求は株式会社自身か株主が行うことになります(306条1項)。そして株主は議決権の1%を保有している必要があり、公開会社の場合はさらに6ヶ月前から引き続き保有していることが要件となります(同2項)。これらの要件は定款によって引き下げることも可能です。検査役選任申立書を裁判所に提出すれば、裁判所で審尋が行われ、基本的に上の要件を満たしていれば検査役が選任されることとなります(同3項)。検査役の報酬や調査費用は会社が負担することとなりますが(同4項)、実際は選任申立を行った者が見込額を予納することとなっております。検査役は必要な調査を行った後、その結果を書面または電磁的記録で裁判所に提出します(同5項)。また会社や申立人に対しても写しが交付されます(同7項)。

業務執行検査役とは

 上記総会検査役の他にも業務執行検査役というものが存在します。株主総会の招集・決議についての適法性調査を行う総会検査役に対し、業務執行検査役は会社の経営陣の業務執行について不正行為や法令・定款違反の疑いがある場合に、会社の業務執行や財産状況を調査させるために選任されます(358条1項)。選任や報酬、調査報告については総会検査役と同様ですが、選任請求の要件は総会検査役よりも加重されており、議決権の3%以上または発行済株式の3%以上の保有が必要です。6ヶ月の保有期間要件は規定されておりません。

コメント

 本件で東京ドームは現在大株主であるオアシス・マネジメントと経営方針で対立が生じているとされます。オアシス・マネジメント側は現経営陣の退陣を求めており今後委任状勧誘などが行われていくことが予想されます。このように株主総会で賛成・反対がある程度拮抗しており、1票1票の有効性が問題となる可能性がある場合に総会検査役が利用されます。招集決定や招集通知、定足数や委任状による議決権行使、取締役等の説明義務など株主総会の運営全般が調査され、裁判所に報告されることとなります。大株主同士での対立や経営陣との確執が生じている場合には、事後的に紛争が生じないよう予め総会検査役の選任を検討しておくことが重要と言えるでしょう。

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