航空燃料大手に排除措置、私的独占の行為類型について
2020/07/16   独禁法対応, 独占禁止法, その他

はじめに

公正取引委員会は7日、航空燃料大手のマイナミ空港サービス(東京都)に対し、新規参入業者を妨害したとして排除措置命令を出していたことがわかりました。独禁法の禁止する私的独占とのことです。今回は排除型私的独占の行為類型について見ていきます。

事案の概要

 公取委の発表によりますと、八尾空港で機上渡し給油による航空燃料の販売を行っているマイナミ空港サービスは、エス・ジー・シー佐賀航空の参入を機に取引先に対してエス・ジー・シーから給油を受けた場合は自社からは供給できない旨の通知を行っていたとされます。同社は折から新規参入により過当競争を引き起こすとしてエス・ジー・シーの参入には反対の立場を表明しており、ノウハウの乏しい業者の燃料と自社の燃料が混ざると不測の事故等が発生するなどと指摘し、またそのような事態が生じた場合には自社は責任を負わない旨の書面に署名を求めていたとのことです。同社は排除措置には従うが今後法廷で争うとしています。

私的独占とは

 事業者が、いかなる方法をもってするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、または支配することによって一定の取引分野における競争を実質的に制限することを私的独占と言い、独禁法によって禁止されております(2条5項、3条)。違反した場合には排除措置命令および課徴金納付命令の対象となっております(7条、7条の2)。私的独占は排除型私的独占と支配型私的独占に分けられており、前者は他の事業者の事業活動を困難にさせるあらゆる行為が該当します。そして後者は他の事業者の株式を取得したり役員を兼任するなどして支配する場合を言います。なお支配型私的独占の場合は必ず課徴金納付命令が出さえることとなります。以下特に排除型私的独占について見ていきます。

排除型私的独占の行為類型

 排除型私的独占は独禁法の条文にもあるように「いかなる方法」でも該当しうると言えます。その中でも特に独禁法で規制されている不公正な取引方法に該当する行為は排除型私的独占の排除行為に含まれます。このように排除行為は多種多様であり全てを類型化することは困難とされております。そこで公取委のガイドラインでは①商品を供給しなければ発生しない費用を下回る対価設定、②排他的取引、③抱き合わせ、④供給拒絶・差別的取扱いの4つにしぼって類型化しております。①はいわゆる不当廉売と呼ばれる行為で健全な競争による値下げではなく経済的合理性のない廉売行為ということです。②の排他的取引は自社と競争関係にある業者と取引しないことを条件とすして相手方と取引を行うといった行為を言います。④は特許などの許諾先の市場において、新規参入を防ぐ目的で新規事業者に許諾しないといった行為が該当します。いずれも排除行為となりやすい行為類型ですがそれ以外を排除するものではありません。

競争の実質的制限

 競争の実質的制限とは、市場においてある程度自由に価格、品質、数量、その他の条件を左右することができる、いわゆる市場支配力を形成し維持し強化することと言われております。不公正な取引方法での公正競争阻害性よりも強いものと言えます。市場におけるシェアや順位、ブランド力、供給余力などから判断されることとなります。その地域でのシェアをほぼ独占しているような企業の場合は該当する可能性が非常に高くなります。

コメント

 本件でマイナミ空港サービスは新規参入業者であるエス・ジー・シーからの給油を受けた場合、自社からは航空燃料を供給できない旨の通知を行い、実際にエス・ジー・シーからの供給を回避している業者がいるとされます。このような行為は不公正な取引方法の1つである排他条件付取引にも該当しうるものと言えます。また同社は八尾空港の航空燃料供給でシェア約80%を占めているとされており、これによって八尾空港での市場支配力を強化できるとものと言えます。以上のように私的独占はその市場において強力な支配力を有する事業者が対象となってきます。公取委でも市場でのシェアが50%を超える事案を優先的に審査していると言われております。正常な競争活動によってシェアを維持することは何ら問題ありませんが新規業者と取引しないよう働きかけることは違法となる可能性が高いと言えます。自社の市場でのシェアが大きい場合には今一度そのような行為がなかったか見直しておくことが重要と言えるでしょう。

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