障害者配慮に前進か - 改正障害者基本法が成立
2011/08/02 法改正対応, 法改正, その他

改正障害者基本法、成立へ
障害者支援に関する基本理念などを定めた改正障害者基本法が、先月29日、参議院本会議で全員一致で可決し、成立した。今月5日に施行される見通しである。主な改正点として、障害者の定義を広げ「社会的障壁」により日常生活に相当な制限を受ける状態にある者まで含めた点、「社会的障壁」を取り除くため必要な配慮を国民に求めた点、障害者の政治参加を促すために投票所の整備を義務付けた点、刑事事件での取調べや裁判での意思疎通方法への配慮を義務付けた点、国・自治体に防犯・防災対策を義務付けた点が挙げられる。
障害者制度改革、一歩前進か?
本改正は2006年に国連総会で採択された「障害者の権利条約」批准に向けた国内法整備の一環である。本改正の背景には、物理的にも意識的にもバリアフリー化の浸透がまだ不十分であること、一方的な自白調書による冤罪の危険性があること、東日本大震災で障害者への情報伝達が不十分であったことなどがあり、これらの問題の改善に向けた同改正法成立は、障害者の人格と個性を尊重する共生社会の実現に向けた一歩前進ともいえる。
しかし、既にいくつかの懸念要因も指摘されている。障害者への国民の配慮に「合理的な配慮」という解釈の余地を残す文言を付けた点、また、障害者が「どこで誰と生活するか」などの自由な選択について「可能な限り」という制約文言を付けた点などである。こういった文言の解釈・運用が濫用されてしまうと、障害者の現実的な権利保障が達成されないおそれがある。
総評
本改正法が障害者の枠を広げたこと、また、国・自治体はもちろん、事業者等に障害者の社会参画への配慮を求めること強く打ちだしたことは高く評価できる。ただ、障害者基本法は、障害者支援の土台となる一般法であり、今後の障害者の社会参画の可能性を示す指針であるため、恣意的な解釈の余地がある文言が障害をもつ人達に不安を感じさせてしまうおそれは否定できない。適正な解釈・運用がなされるかどうかを、今後、注視していく必要がある。
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