ピクセルカンパニーズの子会社、保証債務履行請求訴訟を提起される
2022/08/15 商事法務, コンプライアンス, 債権回収・与信管理

はじめに
ピクセルカンパニーズ株式会社は、東証スタンダード市場に上場中で、日本独自のコンテンツや技術を取り入れたカジノ用ゲーミングマシンの開発、製作、販売を行うほか、フィンテック・IoT事業なども幅広く展開する企業です。8月3日、同社は、同社の連結子会社であり、受託システム開発、技術支援サービスを主な事業として展開するピクセルソリューションズ株式会社が株式会社RIZEから2022年3月2日付で保証債務履行請求訴訟を提起されていたことを発表しました。
ピクセルカンパニーズ株式会社では、同社の代表取締役個人が、個人的な目的の借入れのため、取締役会の承認を受けることなく、ピクセルカンパニーズを連帯保証人として、自身を借主とする金銭消費貸借契約(計1億5000万円の借入金)を締結していたことが発覚しており、それを受けて、社外調査委員会が調査を行い、その最終報告書が7月1日に発表されておりました。今回の発表は、当該報告書に関連しての発表とのことです。
本記事では、ピクセルソリューションズと原告の間でどのような問題が生じ訴訟に発展したのかを見ていきましょう。
今回の訴訟の背景
原告である株式会社RIZEの主張する事実としては、以下になります。
(1)原告RIZEが株式会社シンクコミュニケーションズに対し、金銭消費貸借契約に基づき、2021年11月5日に2,600万円、11月30日に3,500万円を貸し付け(以下、「本件貸付」)
(2)上記(1)に関連し、原告RIZEとピクセルソリューションズ株式会社が連帯保証契約を締結
(3)シンクコミュニケーションズより貸金の返還がないため、原告RIZEは、連帯保証人であるピクセルソリューションズに対し、保証債務履行請求権に基づき合計6,100万円及びこれに対する遅延損害金の支払い義務がある旨を通知
一連の流れを受け、ピクセルソリューションズの親会社であるピクセルカンパニーズは、直ちに事実確認の調査を行いましたが、調査の結果、本件貸付の主債務者であるシンクコミュニケーションズは、ピクセルソリューションズとの間に取引関係こそあったものの、資本関係・人的資本・関連当事者取引はなかったことが確認されています。
ピクセルカンパニーズは、主債務者シンクコミュニケーションズに対し、再三にわたり事実確認を行ったものの、明瞭な回答がないまま、期間が経過したといいます。
また、ピクセルカンパニーズが行った社内調査では、ピクセルソリューションズにおいて他社の借入に対し連帯保証を行った記録はなく、ピクセルカンパニーズにおいても連結子会社が連帯保証を行うための必要な手続きが行われた記録はなかったといいます。そのため、ピクセルカンパニーズは、原告RIZEに対し、連帯保証契約に係る資料の開示請求を行い、事実調査を進めてきましたが、その後、2022年3月2日に原告が当該契約に係る証拠資料と共に訴訟を提起してきたという経緯があります。
今回、原告であるRIZEは、ピクセルソリューションズとの間で連帯保証契約が締結されていることを前提として、ピクセルソリューションズに対し保証債務の履行を請求していますが、ピクセルソリューションズ(及び親会社ピクセルカンパニーズ)においては、ピクセルソリューションズが連帯保証人の立場にあることを否定しており、訴訟では当該連帯保証契約締結の事実の有無が、主な争点となっていると想定されます。
コメント
連結子会社が5ヶ月前に訴訟提起された事実を、ピクセルカンパニーズが今になって公表した背景には、上述した同社の代表取締役の個人的な借り入れに関し、ピクセルカンパニーズがいつの間にか連帯保証人にされていた事案に対する社外調査委員会の調査結果があります。当該調査結果では以下の事実が確認されており、同社の代表取締役とピクセルソリューションズとの関係性に焦点が当たっていました。
(1)2021年5月25日、ピクセルソリューションズが別企業より、土地建物売買契約の解除に伴う違約金債権に基づく債権仮差押命令申立を受けた事案において、土地建物売買契約書及び合意書におけるピクセルソリューションズ側の押印につき、ピクセルカンパニーズの代表取締役が所定の稟議規定及び印章管理規定に基づく手続を経ることなく、自らの判断で行った事実。
(2)過去に、ピクセルソリューションズが取引先(破産手続開始済)に対し、販売用太陽光発電所案件にかかる造成工事費用の一部として2億5,000万円を支払った際、ピクセルカンパニーズの代表取締役の判断で口頭により当該取引先と合意し、契約書等の証憑のない状態で送金が行われていた事実。
(3)ピクセルソリューションズが、沖縄県宮古島市におけるリゾートホテル開発計画のプロジェクトに関し、計画用地の取得金の一部として、プロジェクトの協業先のうちの1社(後に、プロジェクトの全ての履行を拒絶する意思を明確に表示)に対し、4億5,500万円を支払った際、ピクセルカンパニーズの代表取締役の判断で口頭により当該取引先と合意し、契約書等の証憑のない状態で送金が行われていた事実。
ピクセルソリューションズとRIZEとの訴訟の動向については、詳細は発表されておらず、本件に代表取締役の関与があったか否かは明らかにされていませんが、先の社外調査委員会の調査結果では、一連の問題の原因として、①代表取締役個人の法令遵守・コンプライアンス意識の希薄さ、②ピクセルカンパニーズにおいて代表取締役に権限が集中しており、取締役間の牽制機能が有効に機能していなかったこと、③印章管理体制の脆弱さなどが挙げられています。
各社の法務担当者は、自社において同様の問題を抱えていないか、今一度、確認してみるとよいかもしれません。
【参考】(経過開示)社外調査委員会の最終報告受領に関するお知らせ
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