銭形警部も困惑!? 国際犯罪遺族の不遇 判決文が入手できない!!!
2011/02/09   訴訟対応, 刑事法, その他

ニュース概要

2005年11月、浜松市内で発生した強盗殺人事件で、静岡県警は日系ブラジル人アルバレンガ・ウンベルト・ジョゼ・ハジメ容疑者の逮捕状を取ったが、既にブラジルへ出国した後だった。日本とブラジルは犯罪人身柄引渡条約を締結していないため、日本政府はブラジルに対して代理処罰を求め、07年にミナスジェライス州裁判所が禁錮34年5ヶ月の実刑判決を言い渡し、10年に確定した。

同裁判所判決は、外務省南米課が入手して翻訳。警察庁を通して静岡県警も入手していた。そこで、遺族は判決文の開示を日本国側に求めた。
しかし、刑訴法47条は「訴訟に関する書類は、公判の開廷前に公にしてはならない」と規定している。
また刑法は、外国で裁かれた受刑者を日本で再度裁くことを認めている。
以上により「当該判決文が日本での裁判証拠になる可能性がある」として、遺族の請求は認められなかった。

そして11年2月2日、静岡地検は当該事件の不起訴処分を発表したが、それでも「民事訴訟に使うなどの目的がない場合は開示できない可能性が高い」という。

遺族は、弁護士の協力を得て独力で判決文を入手し翻訳した。ただ、そのために費やした時間、労力、費用額は計り知れない。

用語

・代理処罰(だいりしょばつ)

ある国で犯罪を犯した容疑者が母国または第三国へ逃げ込み、犯罪を行った国の捜査機関の捜査権が及ばない場合に、当該国に対して捜査及び裁判を行うことを要請する制度。正式には国外犯処罰という。

・犯罪人身柄引渡条約(はんざいにんみがらひきわたしじょうやく)

国外に逃亡した犯罪容疑者の引き渡しに関する国際条約である。主に2ヶ国間相互の条約として結ばれる。2007年年現在、日本が犯罪人引渡し条約を結んでいる国はアメリカと韓国だけであり、これは世界的に見て極めて少ない部類に属する。ちなみに、フランスは96ヶ国、イギリスは115ヶ国、アメリカは69ヶ国、韓国は25ヶ国と犯罪人引渡し条約を締結している。

雑感

近代法は個人の自由(私的自治)を原則としている。
しかし、グローバル化とともに犯罪も国境を安々と越えて個人に襲い掛かるようになった。それにより、被害者や遺族も国境を越えて闘わなければならなくなった。弱い個人が国際的司法サービスを簡易に受けられる仕組みを早急に整えなければならない。司法サービスの無力化は個人にとって自力救済に走る格好の契機であり、それはテロリズム蔓延への端緒であるからだ。

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