書籍の電子化が出版業界にダメージ??
2011/06/07 知財・ライセンス, 著作権法, その他

新しい「読書」のスタイル
多機能情報端末の普及に伴って、「読書」のスタイルが変容しつつある。
スキャナにより書籍のデータを読み込み、電子書籍を作成して「読書」することが今人気のスタイルだ。多機能情報端末は各メーカーが今最も力を入れている分野の1つであり、今後この新しい読書スタイルは一層浸透していくとことだろう。
このような電子書籍の普及は、出版業界全体にとって明るいニュースであるはずだ。ところが出版業界にとって喜ばしくない結果を引き起こす可能性が生じている。電子書籍化の代行サービスによる著作権侵害の問題である。電子書籍の利用が増加するに伴い、その作成はを手間がかかることから、これを代行するサービスも急増している。出版社側はこの代行サービスが著作権法上の「私的複製」の範囲を逸脱し違法であると指摘する。さらに、人気作家の作品を無断で電子化する事件まで発生している。
私的複製とは
著作権法30条1項
著作権の目的となつている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、その使用する者が複製することができる(但し、同項1号ないし3号の場合を除く)。
新しいスタイル、今後の行方
個人が私的な使用目的で電子書籍を作成し、個人的に楽しむ場合には、私的複製となり著作権法違反とはならない。したがって、業者による電子書籍作成の代行が使用者本人の私的使用の延長といえるのか、それとも利用者とは独立した者の複製行為となるのかが、著作権法上違法となるかどうかの分かれ目となる。
電子書籍は、出版業者や作家にとって、今後、読者層を増やす有望なツールとなるだろう。だが、読者層が増えても購買層が増えなければ健全なビジネスへと発展することは難しい。利用者の違法行為を誘発しないためにも、どこまでが違法でどこまでが適法な方法かを明確にしていくべきであろう。
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