オバマの改革に手痛い一撃? アメリカの医療保険改革法案に違憲の判断!
2011/08/16 訴訟対応, 民事訴訟法, その他

概要
米アトランタ連邦高等裁判所は12日、昨年成立した医療保険改革法が国民に保険加入を義務付けているのは違憲との判断を示した。
オバマ大統領が最大の成果としている改革なだけに、ホワイトハウスは最高裁に上告する構え。
アメリカの医療保険制度の現状について
この問題を解説する前に、アメリカの医療保険制度について解説したいと思います。
アメリカは、日本のように国民全員が利用できる公的な医療保険制度は存在せず、65歳以上の高齢者か障害者等一部の人間が利用できる「メディケア」という
制度があるのみです。
その結果、医療保険は民間のものに加入することとなるのですが、当然日本のように安価なものではなく、加入できない人が発生することになります。
事実、アメリカでは3200万人の国民が医療保険未加入の状態です。
オバマ大統領の医療保険改革
この状態を是正しようと、昨年3月にオバマ大統領が成立させたのが「医療保険改革法」です。
その内容は、①民間の保険会社に全員を加入させる(違反者には罰金) ②強制加入の代わりに収入の少ない人には補助金を出す ③高収入の国民の税金を上げる
④医療保険会社への監督・指導強化 などとなっており、日本のような公的な国民保険制度を作成するのではなく、民間に強制加入させる代わりに国が補助する。というものです。
この法案は昨年3月に、下院で219-212で可決されるという激しい接戦の末の成立でした。
反対派の主な主張は、①国が国民の行動を制限する「大きな政府」への批判 ②改革10年間で9400億ドル(94兆円)かかるとも言われている費用への批判 ③中絶費にまで保険が使われることへの懸念
があります。この中で、③の中絶については、中絶の場合は予算を組まないという条件で大統領側が譲歩しましたが、①②の問題は依然として残っています。
解説
今回は、この改革に反対している共和党の14州のの知事や州司法長官が原告となり、アトランタ連邦高等裁判所に訴えました。
この結果、3人の判事のうち2人が、国民に保険加入を義務付けている点は議会による権限逸脱との見解を示しました。
ただ、同法全体を無効とする地方裁判所の判断は全員一致で退けています。
日本風に言えば、「裁量権の逸脱」が法令の一部にあるという判断です。
ちなみに、シンシナティの連邦高裁では、保険加入の義務付けを合憲としており、最終的な判断は最高裁判所に委ねられることになりそうです。
感想
アメリカの医療保険制度について恥ずかしながら今回初めて知った。
自由の国と言われる一方、格差を放置し、富める者がより勝ち、貧しい物は医療も受けられないというアメリカの現状を端的に表している問題であると思った。
ただし、根拠の無い財源で耳心地の良い改革を標榜しても、すぐに破綻するのはどこかの国を見ても明らかである。
折しもアメリカ国債が格下げされるという未曾有の経済危機にある状態で、この法案を実行するのがアメリカのためになるのか。
最高裁判所の決断に注目してみたい。
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