起きてしまった医療事故にどう向き合うか
2011/07/28 訴訟対応, 民法・商法, その他

第三者調査制度の法制化を-被害者団体らが訴え
7月26日、医療事故の被害者らで構成する「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会」など3団体が、菅直人首相と細川律夫厚労相に対し、医療事故についての第三者調査制度の法制化を求めて意見書を提出した。
患者・遺族の苦悩-何が起きたのか、真実が知りたい
突然、医療事故に見舞われた患者側のショックは大きい。自分や家族の身に何が起きたのか、なぜこんなことになったのか。やりきれない思い、悲しみを乗り越えるために、多くはまず真実を知りたいと切望する。第三者が中立な立場で調査する制度を求める今回の意見書も、背景にはこのような心情があるのではないだろうか。
医師の苦悩-病院側に過失があったのか?は難しい問題
一方で、病院や医師が、診療当時の医療水準に照らして適切な治療を尽くしても、医療の限界等の理由で避けられない事故も起こりうる。訴訟においても、医師の過失の有無は重要な争点である。
最善を尽くしてなお、患者を救えなかったという医師の苦悩もまた、理解できる。
訴訟による解決の問題点
医療事故への向き合い方としてはまず、訴訟による解決が挙げられる。病院側に対する損害賠償請求である。訴訟の場で真実を明らかにし、医師に真摯に向きあって欲しいというのが、患者側の素直な気持ちだろう。
しかし、訴訟で損害賠償が認められれば、病院側としては多額の賠償金を支払う必要がある上、医師に過失があったということになる。したがって、簡単に負けるわけにもいかず、必死に対決しようとするだろう。その結果、患者側との感情的な対立は根深くなり、互いに憎しみあることになりかねない。
そのような状況のもとで、訴訟に勝って金銭的な賠償だけ得たとしても、患者側が十分に納得する結果が得られるとは限らないのではないだろうか。
話し合いによる解決と無過失補償制度
そこで、医療事故について話し合いによる解決を図る、ADR(裁判外紛争解決手続)が有用でないかと言われている。訴訟において過失責任の有無を争うのではなく、医師が患者側の感情に耳を傾け、金銭賠償にとらわれずに最も納得できる解決ができるよう、互いに協力関係を築くのである。これにより、患者側のやりきれない思いが低減されれば、訴訟による勝ち負けとは違った、より建設的な解決の可能性が見えてくる。
また、過失の有無を問わずに金銭的な補償が得られる無過失補償制度の導入も提唱されている。これにより、金銭面で患者を迅速にケアすることができれば、さらに無用な争いが避けられ、医師にとっても患者にとってもメリットとなろう。
【関連リンク】
医療における裁判外紛争処理(医療ADR)
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