個人情報保護法改正と企業への影響
2015/06/30   コンプライアンス, 情報セキュリティ, 個人情報保護法, その他

 2015年5月21日、「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」が衆議院で可決された。今年6月に発生した日本年金機構の個人情報流出により参議院での審議は見送られているが、原案通りの改正がなされれば、個人情報の取扱いに影響が見込まれる。
 そこで、本稿では本改正により「個人情報の範囲」が広がることに伴うビジネスへの影響について言及する。
・個人情報の範囲
 本改正では、従来の個人情報に加え、「個人識別符号が含まれているもの」(改正法2条2項)が「個人情報」に含まれるとしている。
 「個人識別符号」とは、個人の特徴を電子計算機の用に供するために変換した符号で個人を識別できるもの(顔認識データ、指紋データなど。注1)又は個人に発行されるカード等に記載された符号であって特定の利用者を識別できるもの(マイナンバー、運転免許証番号、保険証番号など。注2)で、政令で定めるものをいう。
 具体的内容は政令の制定によることになるが、判断要素としては、個人と情報の結び付きの程度(情報が一意であるか等)、情報の不変性の程度(情報の内容が頻繁に変更されていないか等)、本人への到達性(情報に基づいて直接個人にアプローチできるか等)などが考慮されると考えられる。国会衆議院内閣委員会会議録によれば、マイナンバー、運転免許証番号、保険証番号は該当することになる。
 つまり、新たに加わる「個人識別符号」について、「個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置」(現行法20条)が必要となる。
・本改正による影響
 前述の通り、「個人識別符号」の該当性は政令によるため、その内容は不明確である。そこで、従来個人情報とされてこなかった情報、具体的にはクレジットカード番号やポイントカード等の会員番号などの該当性が問題となる。
 仮にこれに該当するとなるとデータの暗号化などに莫大なコストが発生する可能性があるため、法務担当者は自社が使用している番号が個人情報に当たった場合の影響を検証する必要がある。そして、自社への影響が大きい場合には、本改正に基づく社会への影響を内閣官房や社会に対して発信し、法案の訂正を働きかけるなど、リスク回避に努めるべきだろう。
 上記のような莫大なコストが生じないような場合であっても、個人情報を取り扱う企業の法務担当者は、本改正に対応した、プライバシーポリシーや個人情報の管理マニュアルなどの見直しをする必要があると考えられる。
注1 「特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの」(改正法2条2項1号)
注2 「個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、又は記載され、若しくは記録されることにより、特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの」(改正法2条2項2号)
関連コンテンツ
新着情報
- 業務効率化
 - 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード
 
- 弁護士
 
- 福丸 智温弁護士
 - 弁護士法人かなめ
 - 〒530-0047
大阪府大阪市北区西天満4丁目1−15 西天満内藤ビル 602号 

- 業務効率化
 - Mercator® by Citco公式資料ダウンロード
 
- 解説動画
 
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
 - 終了
 - 視聴時間1時間
 
- まとめ
 - 中国:AI生成画像の著作権侵害を認めた初の判決~その概要と文化庁「考え方」との比較~2024.4.3
 - 「生成AIにより他人著作物の類似物が生成された場合に著作権侵害が認められるか」。この問題に関し...
 
- 弁護士
 
- 原内 直哉弁護士
 - インテンス法律事務所
 - 〒162-0814
東京都新宿区新小川町4番7号アオヤギビル3階 
- 解説動画
 
加藤 賢弁護士
- 【無料】上場企業・IPO準備企業の会社法務部門・総務部門・経理部門の担当者が知っておきたい金融商品取引法の開示規制の基礎
 - 終了
 - 視聴時間1時間
 
- セミナー
 
熊谷 直弥 弁護士(弁護士法人GVA法律事務所 パートナー/第一東京弁護士会所属)
- 【オンライン】2025年春・Web3/暗号資産の法令改正動向まとめ
 - 終了
 - 2025/04/23
 - 12:00~13:00
 
- ニュース
 - 住吉会会長に賠償命令、商号続用で弁済責任を承継 ―東京地裁2025.11.4
 - NEW
 - 指定暴力団住吉会系組員による恐喝事件の被害者が同会の会長に損害賠償を求めていた訴訟で10月27...
 










