トヨタ自動車常務役員事件からみる違法性の認識
2015/06/23 法務相談一般, 刑事法, その他

刑法の規定と違法性の認識
刑法は、38条3項本文により、「法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできない。」としている。行為者が法律をしらない場合であっても、刑法の条文に違反する場合には、刑法が適用され、罪に問われることになる。
法律の存在は知っていても、その法律に違反すると思っていなかった場合に刑法が適用されるか否かは条文に明記されていない。このような場合の判断材料としてあげられるのが違法性の認識である。
違法性の認識とは、自己の行為が「法律上許されないことであるという認識」のことをいう。法律の存在は知っているが、自己の行為が法律上許されないことであるとの認識がない者について、刑法を適用して処罰することができるか否かを違法性の認識の必要性の有無を踏まえて考えることになる。
判例の考え
判例は、判決を下すに際して違法性の認識は不要であるとしている。法の不知を弁明として認めていては、取締りの達成をすることができないと考えるからである。したがって、裁判においては、違法性の認識がない場合も有罪となる可能性が高い。
コメント
トヨタ自動車の常務役員が密輸したとされるのは、「オキシコドン」という錠剤で、日本では麻薬に指定されているが、米国では医薬品として広く使用されているものである。それゆえ、常務役員は、麻薬を密輸した意識はないという。常務役員は違法性の認識に欠けると考えられるが、裁判において違法性の認識に欠ける点については斟酌されない可能性が高い。
日本と外国においての違法性の有無につき、異なるケースは多々ある。このような双方の差異をきちんと認識して行動しなければ、今回の常務役員のように不測の事態を生じかねない。日本と外国で違法性の有無に差異が生じることが多い医薬品等を類型化したリストを作成し、従業員に周知徹底させるといった対策を行っていくことが必要であると考える。
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