<アデランス>セクハラ訴訟、解決金1300万円で和解へ
2015/01/21   労務法務, 労働法全般, その他

アデランスのセクハラ訴訟、解決金1300万円で和解

20日、かつら業界大手の「アデランス」(本社・東京)において兵庫県内の店舗に勤務していた元従業員の女性が、上司の男性従業員からセクハラを受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)となり退職せざるを得なくなったとして、同社に約2700万円の損害賠償を求めた訴訟が大阪地裁(谷口安史裁判長)で和解(昨年11月28日付)したことが判明しました。
訴状によれば、2008年3月、当時大阪市内の店舗で店長だった男性が、指導目的で女性が当時勤務していた兵庫県内の店舗に来店。男性は女性に対し、「数字を達成できなかったら彼女になるか、研修もしくは転勤だ」と言って脅す、無理やりキスをしようとする、さらに体を触るなどのセクハラ行為を行いました。女性は、警察に被害届を提出しようとしましたが、これを会社の幹部から制止され、さらに精神的に不安定となり会社を休職、2010年1月にPTSDと診断されました。その後、女性は2011年9月に会社を退職しました。
今回判明した本件の和解条項では、アデランスが1300万円という同種の和解額に比べてかなり高額な解決金を支払うことが条件とされています。また、解決金のうち半額の650万円はこの男性が負担し、同社は、男性の勤務地及び出張先について、原告の女性の居住する京阪神地域を避けるよう努めることも和解条項に盛り込まれました。

セクハラに関する法律

セクハラについては、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(男女雇用機会均等法)11条1項に以下のような定義規定があります。

「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する従業員の対応により当該従業員がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該従業員の就業環境が害されることのないよう、当該従業員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」

具体的にいかなる行為が“職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること”、“性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること”にあたるか、また、“事業主はいかなる措置を雇用管理上構ずべきか”は、厚生労働省の「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(セクハラ防止指針)に詳細な具体例が挙がっていますので、是非参考にしてみてください。

また、その行為が悪質な場合は、セクハラ行為も刑事責任の対象となる可能性があります。具体的には、暴行又は脅迫によって、反抗することが著しく困難な状況で、性的羞恥心を害するような行為をすれば強制わいせつ罪(刑法176条)、お酒に酔わせたり、病気などでぐったりしているなど、逆らえない状態で強制わいせつに当たるような行為をした場合には、準強制わいせつ罪(刑法178条)、さらに暴行又は脅迫によって反抗することが著しく困難な状況で、性交渉をすれば強姦罪(刑法177条)に問われる可能性が考えられます。

セクハラ慰謝料の相場は?

日本の裁判におけるセクハラ行為に対する慰謝料の相場は、その行為の継続性や悪質性、性行為の有無、そして精神疾患の発症や、休職・退職したか等、様々な事情が考慮されるので一概には言えませんが、おおよそ30万円~300万円となるケースが多いと言われてきました。
具体的には、性行為まで至っていないものや、退職にまで至らなかったものは慰謝料100万円以内、性行為にまで及んでいるものや、退職せざるをえないような悪質性の高いものについては100万円以上という傾向がみられるようです。
上記に照らせば、今回の解決件1300万円というのがいかに高額かがわかると思います。
しかし、今回の例のみが極めて特殊というわけではなく、1999年以降、日本においても700万~1000万前後の慰謝料を認める判例(東北大事件・仙台地判平11.5.24判時 1705-135、西の京高校事件・奈良地判平成 11.12.1など)が増加傾向にあるのも事実です。

終わりに

セクハラに関する慰謝料、損害賠償が高騰することは、「女性の社会進出」「女性が輝く社会」を推進する現在の日本にとって、セクハラ行為の抑止力となり歓迎すべき傾向といえるでしょう。また、被害にあった女性の身体的・精神的苦痛に照らせば、高額な慰謝料は、むしろ当然といえるのかもしれません。
しかし、企業側とすれば、加害者の従業員だけでなく、企業自身が使用者責任(民法715条)として被害者から高額な賠償を請求される可能性があり、さらに、現代社会においては「セクハラ事件を起こした企業」という汚名による損害は計り知れません。
したがって、企業の人事・法務など管理部門としては、これまで以上に、社内におけるセクハラの防止活動に力を入れる必要があると言えるでしょう。

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