大阪地裁が920万円支払い命令、無断駐車対策について
2018/07/27 民法・商法

はじめに
コンビニエンスストアの駐車場に2台の車を無断駐車し続けていた男性に対する損害賠償請求訴訟で26日、大阪地裁は約920万円の支払いを命じる判決を出しました。1000万円近くの賠償が認められたことは異例とされます。今回は違法駐車、無断駐車に対する対策を見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、被告の男性は2013年8月~2015年2月に渡ってほぼ毎日無断駐車を行っていたとのことです。乗用車1台については合計7472時間、もう1台については3694時間駐車しており、店舗を利用することなく8ヶ月間停め続けたこともあるとされます。無断駐車時間は1万1166時間に上り、経営者が何度張り紙をしてもやめず提訴に踏み切ったとのことです。
違法駐車に対する賠償請求
自己の土地に無断で違法に駐車された場合は不法行為として損害賠償請求することが考えられます。民法709条では故意または過失によって他人の権利、法律上保護された利益を侵害した場合、その損害を賠償する責任を負うとされております。私有地はもとより、店舗の駐車場でも、店舗利用以外での無断駐車は不法行為となります。その地周辺の通常の駐車料金相当額を損害として賠償請求することができます。
罰金徴収について
無断駐車がよくなされる私有地や駐車場には「金10万円徴収いたします」などといった張り紙がなされている場合があります。このようないわゆる罰金を取ることは可能なのでしょうか。結論的にはいわゆる「罰金」を取ることはできません。罰金とは一定の事由により法律に基づいて国家が徴収するもので、私人が徴収することはできないからです。また民法420条に規定されている「損害賠償額の予定」にも該当しないと考えられます。この規定は債務不履行の賠償額を予め当事者間で合意しておくというもので一種の契約だからです。一方的に決定しておくことはできないと言えます。罰金の張り紙は無断駐車に対し一定の抑止効果はあるかもしれませんが法的には意味をなさないと言えます。
所有者の特定
無断駐車について損害賠償請求するためにはまず車の所有者を特定する必要があります。車の所有者を特定する方法としてはまず最寄りの運輸支局か自動車検査登録事務所に「登録事項等証明書」を請求する方法があります。請求には当然所有者の個人情報の配慮から正当な理由が必要となり、また請求者の身分証明が必要となります。手数料は300円です。もう一つは弁護士会を通して照会する方法です(弁護士法23条の2)。いわゆる23条照会と呼ばれるもので、弁護士が受任している事件について弁護士会を通じて照会請求できるものです。これは弁護士しかできず、弁護士に依頼する必要があります。
コメント
本件で被告男性は1万1166時間、約465日分に相当する長期に渡って無断駐車を繰り返してきました。周辺の相場から1時間あたり700円を駐車料金相当額として約920万円の賠償が認められました。被告男性は裁判所への出席も答弁書の提出も行わなかったとのことです。これにより原告の主張を自白したことになり(民事訴訟法159条1項3項「擬制自白」)、原告の主張が100%認められる欠席判決が出されたことになります(同244条)。以後被告男性の財産を差し押さえる強制執行手続に入っていくこととなります。以上のように店舗の駐車場や会社の敷地などに無断駐車がなされた場合は所有者が不明で賠償請求をしていくことは可能です。また場合によっては車自体を強制執行で差し押さえることも考えられます。業務の妨害となる悪質な無断駐車には速やかに対処していくことが重要と言えるでしょう。
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