神奈川県LPガス協会に排除措置、事業者団体規制について
2018/03/16   コンプライアンス, 独占禁止法

はじめに

個性取引委員会は9日、公益社団法人「神奈川県LPガス協会」に対し、入会を希望するLPガス販売業者の加入を拒否したとして排除措置命令を行った旨発表しました。既存の加入業者の事業保護を図ったものと見られます。今回は独禁法が規制する事業者団体の行為について見ていきます。

事案の概要

公取委の発表によりますと、神奈川県内で液化石油ガス販売事業を行う場合には神奈川県知事の、それ以外の都道府県にもまたがる場合には経産大臣の登録を受ける必要があります。その際にはLPガス損害賠償責任保険に加入しておく必要があるとのこです。LPガス損害賠償責任保険には協会団体保険、全農団体保険、個別保険があり、ほとんどの事業者は協会団体保険に加入しているとされます。この協会団体保険に加入するためには神奈川県LPガス協会に入会する必要があるところ、同協会は消費者に供給業者を自社に切り替えるよう勧誘する、いわゆる「切替営業」を行う業者の加入を拒否しておりました。これにより協会団体保険に加入できず、事業活動が困難となる事態となっていたとされます。

事業者団体とは

事業者団体とは、独禁法2条2項によりますと、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2以上の事業者の結合体又はその連合体をいうとされます。◯◯協会、◯◯協議会、◯◯組合といったものが該当します。事業者としての共通の利益とは構成事業者の経済活動上の利益に寄与するものを言い、その増進を図ることが主要な目的となっている団体です。定款や規約でどのように目的が記載されていても、実際の活動内容から実質的に判断されることになります。

禁止される行為

(1)一定の取引分野における競争の実質的制限
事業者団体が、その構成事業者の供給する商品等に関して、価格を决定したり、維持、引き上げを行うこと、またその商品等の数量を制限したり、販路や供給設備などを制限、新規事業者の参入を制限するなどして、市場での競争を実質的に制限する行為が禁止されます(8条1号)。個々の事業者が行った場合は不当な取引制限や私的独占に該当する行為です(3条)。

(2)国際協定
事業者団体が外国事業者または外国事業者団体と不当な取引制限や不公正な取引方法に該当する内容の国際協定を結ぶことが禁止されます。たとえば国際的な価格協定や市場分割協定などを締結することが該当すると言われております(同2号)。

(3)事業者数の制限
事業者団体が新たに市場に事業者が参入してくることを阻止したり、既存の事業者を排除することによって、当該事業分野での事業者の数を制限することが禁止されます(同3号)。事業のために必要な資格や許可を得るために、特定の団体に加入することを要する場合に、その加入を拒否したり制限する行為が典型例と言えます。

(4)構成事業者の活動制限
事業者団体が、そこの加入している構成事業者に対し、その機能または活動を不当に制限することが禁止されます(同4号)。ここに言う「不当に」とは不公正な取引方法規制で言うところの公正競争阻害性と同義と言われており、構成事業者間での競争を阻害する行為一般を指すとされます。

(5)事業者に不公正な取引方法を行わせること
事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為を行わせることが禁止されます(同5号)。ここに言う事業者とは構成事業者だけでなく、それ以外の事業者も含まれ、それらの事業者に取引拒絶や排他条件付取引、拘束条件付取引などの不公正な取引方法に該当する行為を強制したり、働きかけることが該当するとされます。事業者団体に加入していない事業者とは取引しないよう、構成事業者に圧力を加えるといった行為が典型例と言えます。

コメント

本件で神奈川県LPガス協会は新規参入を希望するLPガス販売業者の加入を拒否しております。協会に入会できない場合は協会団体保険に入ることができず、またそれに代替する保険もほとんど存在しないことから事業活動が困難になるものと言え、8条3号の事業者数の制限に該当すると判断されたものと考えられます。事業者団体規制に違反した場合、行為の差止や再発防止、団体の解散といった排除措置命令が出され(8条の2)、8条1号、2号に該当する行為の場合には課徴金納付命令が出されます(8条の3)。個々の内容は事業者単体でも行うことができますが、本条は団体として行う場合を規制しております。既存業者の保護や需給調整などの目的で新規事業者を排除することは違反となります。以上のことに注意し、団体側は違反行為に該当しないよう、また事業者側は、このような場合には独禁法に違反することを前提に対策を講じることが重要と言えるでしょう。

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