トヨタモビリティ東京とグッドスピードに保険業法に基づく業務改善命令
2025/01/27 金融法務, コンプライアンス, 保険業法, 金融・証券・保険

はじめに
金融庁は1月24日、トヨタ自動車の販売子会社の「トヨタモビリティ東京株式会社」と中古車販売大手「株式会社グッドスピード」に対し、保険業法に基づく業務改善命令を出しました。
保険代理店としての経営管理態勢、保険募集管理態勢などで問題が認められたとしています。
保険の不正請求やガバナンス機能不全を指摘
トヨタモビリティ東京は新車、中古車販売や保険販売、自動車点検・整備などを手がけており、店舗数は合わせて200を越える大手ディーラーです。
一方のグッドスピードは愛知県に拠点を構え、中古車販売業を営んでいます。
いずれの会社も財務局に保険代理店として登録を行っており、自動車損害賠償責任保険の加入手続きや任意保険の販売を行っています。
金融庁が2社に指摘した内容の概要は以下のようになっています。
○トヨタモビリティ東京
・保険金不正請求が少なくとも4,820台で発覚
(修理に使用していない部品代金を保険金として過大に請求)
・経営管理態勢(ガバナンス体制)が機能不全となっている
・保険募集管理態勢での問題
(人員や権限不足で、教育なども行われていない。特定の保険会社の商品を推奨する際に推奨理由を説明していない)
○グッドスピード
・保険募集管理態勢が整備されていない
・顧客に説明すべき保険の推奨理由などを怠っていた
・保険募集を管理する「管理部門」が、保険の推奨を行う「営業推進部門」の傘下に配置されているため、管理部門が営業部門に対してけん制機能を確保していない
金融庁は、トヨタモビリティとグッドスピードに対し、「2月21日までに業務の改善計画を提出し、ただちに実行するよう」求めました。また、改善計画の進捗や改善状況を3ヶ月ごとに報告することも要求しています。
今回の業務改善命令に先立ち、金融庁は2024年秋に両社への立ち入り検査を実施しています。
立ち入り検査が行われた背景には、旧・株式会社ビッグモーターの問題があります。旧ビッグモーターでは、事故車の修理で意図的に車を損傷するなどして、保険金を水増し請求する行為が横行していました。金融庁は、同社の保険金不正請求問題を受け、保険代理店を兼ねる自動車販売会社や自動車販売会社などへの立入検査を行うなどし、実態調査を進めていました。
保険業法改正案について
こうした中、金融庁は1月22日、保険業法改正案の概要を、自民党の部会で示しました。
改正案では、複数の保険会社の商品を扱う大規模な乗り合い代理店を「特定大規模乗合損害保険代理店(仮称)」と定義し、こうした大規模な兼業保険代理店に対する規制を強化しています。
具体的には、顧客が修理業務などを通じて不利益を被ることを防ぐべく、監視体制の整備とコンプライアンス責任者らの配置を義務づけています。
また、現行の保険業法では、保険金の水増し請求についての違反規定がありませんが、今後は、必要のない修理を行って保険金を水増し請求したような場合には、金融庁が業務停止命令などの行政処分を出せるようになるということです。
金融庁は、間もなく、これらの内容が盛り込まれた改正案を通常国会に提出する見通しです。
コメント
ビッグモーターで起こった不正問題を契機に、規制が強化されています。顧客の信頼を損なう行為への規制が厳格化されることで、事業の透明性向上が期待されます。
また、金融庁は、コンプライアンス部門が適切に機能するよう求めています。内部監査部門の独立性をどのように確保し、ガバナンスを強化するか。すべての事業者にとって重要な課題となります。
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