ビッグモーター、自動車保険不正請求事件の調査報告書受領を発表
2023/07/18   コンプライアンス, 自動車

はじめに


中古車販売会社大手の「ビッグモーター」が、故意に車に傷をつけるなどして大手損害保険3社に自動車保険の保険金を不正に請求していた問題が明らかになりました。不正の背景にあったのは、過剰な営業ノルマといわれています。

故意に車を傷つけて、不正請求


株式会社ビッグモーターは7月5日、かねてより取り沙汰されていた自動車保険の保険金不正請求事件に関し、特別調査委員会の調査の結果、不適切な行為が確認された旨、発表しました。

ビッグモーターは全国に300店舗を超えるネットワークを誇り、『お客様のカーライフをトータルにサポートする、「クルマの総合提案企業」』をとして、国産車、外国車の中古車・新車販売及び車両買取業務のほか、車検・一般整備及び鈑金塗装業務、損害保険代理店及び自動車関連業務を行っています。

今や社員数6000人を抱えるこの会社は、自動車保険の保険金を不正に請求していた問題で大手損害保険3社が払いすぎた分の保険金の返還を求めるなど大きく揺れています。

報道などによりますと、具体的な手口としては、次のような事例があったとされています。

・ヘッドライトのカバーを割った
・ドライバーで車体に傷をつけた
・ひょう被害の車を靴下に入れたゴルフボールで叩き、傷範囲を拡大させた
・塗装の品質を実際より高く装った
・工具のドライバーを使って車体をひっかいた

こうした悪質な行為で車両を故意に傷つけ、不必要な部品交換等を行う手口で保険金請求額を水増ししたとされていて、不正請求の件数は総修理件数の4割に上る可能性があるということです。

 

内部告発により発覚


一連の不正行為は、2022年に、店舗の従業員が社長らへ内部告発したことで明らかになったといいます。しかし、告発当初、社長らは職場内の確執によるものだと判断。特に調査を指示することもなかったといいます。特別調査委員会の報告書では、当時のこうした対応について「告発をもみ消したと言わざるを得ない」との指摘もあったといわれています。

一方、損害保険会社側は、この告発を受けてサンプル調査を実施。その結果、33の修理工場で300件をこえる不正が発覚したということです。

損害保険会社側はサンプル調査で不正と判断した分の過払い金の返還について請求した上、ビッグモーター側にさらに厳格な調査を要求しました。

ビッグモーターは、外部の弁護士を集めて特別調査委員会を設置。そして今月5日に、調査報告書を受け取り、自動車保険の保険金請求で不適切な行為があったと発表しました。

さらに、特別調査委員会は従業員へアンケート調査を実施。車の修理などを担当する従業員382人のうち、104人が「不適切な保険金の請求につながる不正な作業に関与した」、68人が「自分以外の人が不正な作業に関与しているのを見聞きしたことがある」と回答。さらに、不正に関し、「工場長らの指示があった」と回答した従業員もいたということです。

不正は組織ぐるみで行われたとみられていて、店舗ごとに課せられた過剰な営業ノルマが、不正をしなければ達成できなかったことなどが不正横行の要因の一つとみられています。

 

問題の背景に、営業ノルマの存在


今回の不正行為の原因の一つとされている営業ノルマ。具体的には、車両修理1件当たりの作業代金と、交換した車両パーツの粗利の合計額の平均値を上げるようにノルマが課されていたといいます。一部報道などによりますと、平均値が低い工場の責任者は、上層部より会議で詰問されたり、降格処分にあうなど、必達のノルマとして設定されていたといわれています。

なお、一般的に、営業ノルマの設定自体に法的問題は生じない一方、以下のような場合には、違法性が指摘されるおそれがあります。

・商品を自腹で購入することによってその不足分を補うこと(自爆営業)
労働基準法16条では、賠償予定の禁止が定められていて、目標未達成を理由に商品購入を強要することは違法となります。また、労働基準法24条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされ、会社が給料から差し引くと同条違反となります。

・ノルマ未達を理由とした減給、解雇など懲戒処分
運用次第では、パワーハラスメント、不当解雇とみなされる恐れがあります。ただし、ノルマ達成で昇格、降格することが就業規則などで記載されているなど適切に運用されている場合、原則的に違法の問題は生じないとされています。

 

コメント


まだまだ波紋が続く、今回の自動車保険・保険金不正請求事件。ビッグモーターが不当に車体を傷つけるなどしたことで、利用者の中には保険の等級が下がった利用者もいるということで、保険を本来の水準に戻す手続きも進められるということです。また、一部の損害保険会社とビッグモーターとの癒着を疑う声もあり、真相究明が待たれます。

 

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