家電量販店ノジマ、代金不当減額で公正取引委員会より勧告
2023/07/04   コンプライアンス, 行政対応, 下請法

はじめに


神奈川や東京など関東を中心に展開する家電量販店大手の「ノジマ」。その運営会社である株式会社ノジマが公正取引委員会から下請け法違反で、勧告を受けていたことがわかりました。

下請け法違反を理由とする勧告や指導の件数は令和4年度で8600件余りと過去最多となっており、公正取引委員会では規制を強めています。

 

事案の概要


公正取引委員会は、6月29日、株式会社ノジマに対し、下請法第7条2項の規定に基づき、勧告を行ったと発表しました。これまで進めた来た調査の結果、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)第4条1項3号(下請代金の減額の禁止)に違反する行為が認められたためとのことです。

公正取引委員会の発表などによりますと、ノジマは2019年7月~22年10月の期間、下請けの2社(資本金額が3億円以下の法人)に対し、製造を委託していたノジマのプライベートブランドの家電製品について、本来支払うべき金額から不当な減額を行っていたとされています。
具体的には、商品の値下げの原資とする「拡売費」や商品を物流拠点から店舗まで運ぶ「物流協力金」、「セールリベート」、「キャッシュリベート」、「オープンセール助成」、「発注手数料」の名目で、総額7310万9046円を差し引いていたといいます。

下請法第4条1項3号では、下請け業者に落ち度や責任がないにも関わらず、発注をした親事業者が、発注後に代金を減額することを禁止しています。公正取引委員会は、一連の代金不当減額を受け、ノジマに対し以下のような勧告を行いました。

(1)一連の行為が下請法が禁じる“代金不当減額”にあたる旨、取締役会決議による確認を行うこと
(2)今後、“代金不当減額”を行わない旨、取締役会決議による確認を行うこと
(3)発注担当者等に対する下請法の研修をはじめ、再発予防のため社内体制の整備を行うこと
(4)減額した金額を下請事業者に支払った旨および(1)~(3)の措置を行った旨を自社の役員、従業員および取引先下請事業者に通知すること
(5)今回の勧告を受けて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること

なお、ノジマはすでに下請事業者に対し、減額した金額を返還したということです。

 

下請け法違反での勧告・指導件数が過去最多


5月30日に公正取引委員会が行った発表によると、令和4年度に公正取引委員会が下請法違反を理由に行った勧告や指導の件数は、前年度比745件増の8671件で、過去最多となったといいます。

そのうち、勧告件数は6件で、違反行為類型の内訳は以下のようになっています。

・下請代金の減額3件
・返品2件
・買いたたき1件
・不当な経済上の利益の提供要請2件
※1件の勧告事件で複数の違反行為類型について勧告を行っているケースを含む

一方、指導件数は8665件でした。

業種別では、「製造業」が37%で最多。次いで「卸売り・小売業」19.8%、「情報通信業」13%と続く結果になっています。

勧告・指導件数増加の要因について、公正取引委員会は、ウクライナ情勢や円安の影響による原材料費の高騰などが背景にあるのではないかと分析しています。

なお、公正取引委員会では不当な行為についての相談窓口を設置していますが、昨年度の相談件数はおよそ1万4000件で、前年度よりおよそ3000件増えたということです。

令和4年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組(公正取引委員会)

 

下請法が定める親事業者の禁止行為


下請法の適用対象は、「製造委託」「修理委託」「情報成果物の作成委託」「役務の提供委託」の4種類の取引となっています。
その中で、親事業者には11項目の禁止事項が課せられており、これらの項目については、下請事業者の了解の有無・親事業者に違法性の認識の有無を問わず、下請法違反となります。

①受領拒否(第1項第1号)
注文した物品等の受領を拒むこと。

②下請代金の支払遅延(第1項第2号)
下請代金を定められた支払期日(受領後60日以内)までに支払わないこと。

③下請代金の減額(第1項第3号)
事前に定めた下請代金を減額すること。

④返品(第1項第4号)
受け取った物品等を返品すること。

⑤買いたたき(第1項第5号)
類似品等の価格や市場価格に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること。

⑥購入・利用強制(第1項第6号)
親事業者が下請事業者に対し、指定する物・役務を強制的に購入・利用させること。

⑦報復措置(第1項第7号)
下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会又は中小企業庁に知らせたことを理由に、当該下請事業者に対し、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること。

⑧有償支給原材料等の対価の早期決済(第2項第1号)
親事業者が有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺または支払わせること。

⑨割引困難な手形の交付(第2項第2号)
一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形を交付すること。

⑩不当な経済上の利益の提供要請(第2項第3号)
下請事業者に対し、金銭労務の提供等を要求すること。

⑪不当な給付内容の変更及び不当なやり直し(第2項第4号)
費用負担を行うことなく注文内容の変更または受領後のやり直しをさせること。

 

コメント


下請事業者の了解の有無・親事業者に違法性の認識の有無を問わず、指導・勧告の対象となる下請法。特に、前例の踏襲に重きを置かれがちな大手企業においては、それまでの親事業者・下請事業者間での慣行を無批判に踏襲してしまう事例が多いといわれています。

現場担当者の下請法に対する理解の深化ももちろん重要ですが、下請事業者と具体的にどのような取引を行っているのか、そこに下請け法違反となる行為はないのか、定期的にモニタリングする仕組みを作る必要がありそうです。

 

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