環境省がレオパレスに立入検査、家電リサイクル法の規制について
2023/01/26   コンプライアンス, 住宅・不動産

はじめに

エアコンやテレビなどの廃棄家電を不適切に処理した疑いがあるとして、環境省がレオパレス21に立入検査を行っていたことがわかりました。同省は是正勧告を検討しているとのことです。今回は一定の家電品の処理を規制する家電リサイクル法について見ていきます。

 

事案の概要

 報道などによりますと、環境省と経産省は昨年9月に賃貸アパート大手の「レオパレス21」に対して立入検査を実施していたとされます。同社は家電を購入後、自社の管理アパートに設置し、代金をアパートオーナーから受領しており、家電リサイクル法上は小売業者に該当するとされ、一定の家電品については廃棄時にリサイクル券の交付などが必要であったとのことです。しかし同社はこれらの手続きを行っておらず家電リサイクル法に違反して不適切に処理していた疑いがあるとして環境省などが調査をしておりました。同社は同法令上、小売業者に該当するとの認識がなかったとし、今後処理方法の運用を切り替えていくとしております。

 

家電リサイクル法とは

 特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)とは、一般家庭や事務所などから排出されたエアコン、テレビ、冷蔵庫などの特定家庭用機器廃棄物から、有用な部品や材料をリサイクルし、廃棄物を削減するとともに資源の有効活用を促進するための法律とされます。家電リサイクル法では消費者等から排出された家電品等を小売業者が収集し、特定引取場所に引き渡すことによってリサイクルがなされます。対象となる家電品は、市区町村等では再商品化が困難で、再商品化の必要性が高く、設計・部品等の選択が再商品化に重要な影響を及ぼし、小売業者による収集が合理的であるという要件のもと政令で指定されます(2条4項)。そして現在指定されているのは(1)エアコン、(2)テレビ、(3)冷蔵庫・冷凍庫、(4)洗濯機・衣類乾燥機の4種類となっております。

 

家電リサイクル法の小売業者

 家電リサイクル法上の「小売業者」とは、特定家庭用機器の小売販売を業として行う者とされます。これはいわゆる家電量販店など店頭で販売する業者に限られず、インターネット販売・通信販売、古物営業、質屋営業なども広く含まれるとされます。小売業者は費用を負担して排出する消費者等とリサイクルを行う製造業者を繋ぐ存在とされ、小売業者の役割は重要とされております。この小売業者に課された義務を多きく分けて4つあり、(1)排出者からの引取義務、(2)製造業者等への引渡義務、(3)収集運搬料金の公表・応答義務、(4)管理票の交付・管理・保管義務となっております。また小売業者は消費者が特定家庭用機器を長時間使用できるよう必要な情報を提供するととともに、消費者による適正な排出を確保するために協力する努力義務も課されております(5条)。以下小売業者の義務を具体的に見ていきます。

 

小売業者の義務

(1)引取義務

 小売業者は自らが過去に販売した廃家電の引取を求められた時、または買い換えの際に同種の廃家電の引取を求められたときは正当な理由がある場合を除き、排出者から廃家電を引取らなければならないとされております(9条)。これは小売業者が小売販売として携わった範囲で引取義務を課すものとされております。正当な理由とは天災等や排出者が料金を支払わない場合とされます。

(2)製造業者等への引渡義務

 小売業者は廃家電を引取ったときは、自らリユースする場合、リユース等をする者(消費者等)に譲渡する場合、リユース販売をする者(業者)に譲渡する場合などを除き製造業者等に引き渡さなければならないとされます(10条)。製造業者等への引渡しは、製造業者等が指定する引取場所(全国349か所)に持ち込めばそれで義務を履行されたことになるとされております。

(3)収集運搬料金の公表・応答義務

 小売業者は指定引取場所までの収集運搬に要する料金を消費者等に請求することができます。ただしその料金は事前に公表しなければならず、適正な原価を考慮して設定し、廃家電の適正な排出を妨げることがないようにしなければならないとされております(11条、13条1項~3項)。そして製造業者等が定めるリサイクル料金も排出者に請求することができ、製造業者等からの請求に応じて支払うとされ、排出者から求められたときはこれらの料金を提示しなければなりません(12条、13条4項、19条)。

(4)管理票の交付・管理・保管義務

 小売業者は排出者から廃家電を引き取る際に、管理票(家電リサイクル券)の写しを交付し、また製造業者等に引渡す際に管理票を交付する必要があります(43条1項~4項)。また排出者から閲覧の申し出があった場合には、正当な理由がなければ拒むことができないとされます(同5項)。この管理票には交付年月日、排出者の氏名・電話番号、小売業者の名称・本店または支店の所在地、廃家電の種類、製造者等名を記載することとなります。なお管理票は廃家電1個につき1枚発行します。

 

コメント

 本件でレオパレスは、自社の管理する物件に自社で購入した家電品を設置し、オーナーに提供してその代金を受け取っていたとされます。この場合家電リサイクル法上は「小売業者」に該当することとなり、設置された家電品を廃棄等する場合には管理票の交付や管理、リサイクル料金の徴収などの義務が発生していたことになります。同社は同法上の小売業者に該当すると認識していなかったとされます。以上のように家電リサイクル法上の小売業者に該当する場合は量販店と同様にこれらの義務を負うこととなります。本件でもあるように同法の小売業者は家電品を提供して代金を受け取っている場合には該当することとなることから自社が該当していることを認識できていない場合も多いと考えられます。エアコンやテレビなどを自社で購入して顧客に販売している場合は今一度要件に該当しないかを確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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