スズキ・VW間の紛争で登場した国際仲裁とは?
2015/09/04 法務相談一般, 外国法, メーカー

1 概要
先月末、国際商業会議所(ICC、本部:パリ)の国際仲裁裁判所は、スズキ・フォルクスワーゲン(VW)間の資本提携の解消を認める判断を下した。
両社は2009年に資本提携を発表したが、経営の独立性などをめぐって対立し、スズキが11年に提携の解消を申し入れた。しかし、VWがこれに応じなかったため、スズキは国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てていた。
2 国際商業会議所(ICC)とは
ICCは、第一次世界大戦で荒廃したヨーロッパの復興と自由な国際通商の実現を目指して、1920年にパリにおいて創立総会が開かれ、民間企業の世界ビジネス機構として活動している。世界130カ国以上の国内委員会等及びその直接会員である企業・団体により構成され、日本委員会は、1923年に正式に発足している(詳細については、ICC JAPAN公式HP参照)。
3 なぜ裁判ではなく国際仲裁なのか(一般社団法人日本商事仲裁協会公式HP参照)
(1)当事者が選んだ専門家による判断
国際仲裁では、仲裁人を当事者が原則として自由に選ぶことができるため、紛争内容に応じた専門家による判断が期待できる。これに対し、一方当事者の国における裁判では、裁判官を当事者が自由に選ぶことはできない。
(2)非公開性
一般に、仲裁手続は非公開であり、仲裁判断も当事者の合意がない限り公表されないため、営業秘密等が守られる。これに対し、一方当事者の国における裁判では、公開が原則となる。
(3)国際性
国際仲裁の場合、「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(ニューヨーク条約)があり、約150か国が締約しているため、その判断を外国で執行することは容易である。これに対し、一方当事者の国における裁判の場合、判決を外国で執行することは困難である。
4 コメント
経済のグローバル化に伴い、日本企業の国際仲裁案件も増加傾向にあるという。本件ではスズキとVWという2つの世界的大企業が当事者となっているが、そのような規模でない企業においても、グローバル展開が不可避である今日においては、いつ当事者となっても不思議ではない。企業法務実務において、今後ますます国際仲裁への対応が重要となってくるのであるから、企業規模の大小を問わず、それに向けた人材の登用・育成などを進めることが求められる。
関連コンテンツ
新着情報

- 業務効率化
- Mercator® by Citco公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 片山 優弁護士
- オリンピア法律事務所
- 〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内一丁目17番19号 キリックス丸の内ビル5階

- 解説動画
大東 泰雄弁護士
- 【無料】優越的地位の濫用・下請法の最新トピック一挙解説 ~コスト上昇下での価格交渉・インボイス制度対応の留意点~
- 終了
- 視聴時間1時間

- まとめ
- 株主総会の手続き まとめ2024.4.18
- どの企業でも毎年事業年度終了後の一定期間内に定時株主総会を招集することが求められております。...

- 業務効率化
- 鈴与の契約書管理 公式資料ダウンロード
- 弁護士
- 大谷 拓己弁護士
- 弁護士法人 咲くやこの花法律事務所
- 〒550-0011
大阪府大阪市西区阿波座1丁目6−1 JMFビル西本町01 9階

- ニュース
- 1000円着服で懲戒免職に退職金1,200万円不支給、最高裁は「適法」と判断2025.4.22
- 運賃1,000円を着服したなどとして懲戒免職となった京都市営バスの元運転手の男性。男性は退職金...

- 解説動画
奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
潮崎明憲 氏(株式会社パソナ 法務専門キャリアアドバイザー)
- [アーカイブ]”法務キャリア”の明暗を分ける!5年後に向けて必要なスキル・マインド・経験
- 終了
- 視聴時間1時間27分

- セミナー
松尾 剛行 弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所/第一東京弁護士会)
- 【オンライン】2040年の企業法務への招待。〜松尾剛行先生に聞く、AI による法務業務の効率化とその限界〜
- 終了
- 2025/03/06
- 12:00~13:00