てるみくらぶが配当終了、破産法の配当手続きについて
2019/09/17 債権回収・与信管理, 破産法

はじめに
2017年3月に突然営業を停止した格安旅行会社「てるみくらぶ」(東京都)の配当手続きが8月30日に終了していたことがわかりました。一般債権者は約1万5000人に上ったとのことです。今回は破産手続きにおける配当手続きについて見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、格安旅行を手掛けていたてるみくらぶは2016年頃からツアーが突然中止されたり、航空券が発券できなくなるなどのトラブルが相次いでおりました。観光庁も立入検査を行うなか、てるみくらぶを通じて既に支払い済みの宿泊代をホテルから請求され、その分の補償もなされないといったトラブルも発生し、2017年3月27日に同社は東京地裁に破産手続き開始の申立てを行い同日開始決定がなされていたとのことです。負債総額は約217億円とされております。
破産手続きの流れ
債務者が支払不能や債務超過に陥った場合に、債務者または債権者の申立てにより裁判所は破産手続き開始の決定をします(破産法15条、18条、30条)。同時に破産管財人が選任され(74条)、破産者の財産は破産財団となって破産管財人が管理することとなります。その後債務者、管財人、弁護士などを交えて協議がなされ、開始決定から数ヶ月後に債権者集会が開催されます(135条)。管財人により破産財団の処分と換価が終了すれば債権者に配当がなされ(193条)、裁判所の破産手続終結の決定により終了します(220条)。
配当の種類と優先順位
管財人による換価終了後に行われる配当を「最後配当」と言います(195条1項)。このとき配当可能な財産が1000万円に満たない場合には「簡易配当」行うこともできます(204条)。また届け出をした破産債権者の全員が管財人の配当表に同意している場合には「同意配当」を行うことができます(208条)。換価・処分が長引き最後配当までに相当時間がかかる場合には、最後配当に先立って「中間配当」を行うことも可能です(209条)。そして配当の優先順位は①税金や年金保険料などの公租公課、②共益費、雇用債権、葬式費用、日用品債権などの債権、③一般債権、④劣後債権、⑤約定劣後債権となっております(98条1項、2項)。優先債権に先に配当がなされ、その後一般債権者などに公平に配当されます。
別除権とは
なお抵当権や質権、特別先取特権などを持っている債権者は以上の配当手続きとは無関係に債権を回収することができます(65条)。これを別除権と呼びます。これらの担保権がついた財産もすべて一旦は破産財団に組み込まれますが、担保権者は破産手続き外で取り立てることができるということです。なお民法上の留置権は別除権として認められておりませんが、商法上の留置権は特別先取特権の一種として優先されます。
コメント
本件で管財人が換価したてるみくらぶの配当原資は約2億7000万円とされており、約1万5000人の一般債権者に配当がなされ最後配当が終了したとされております。配当率は1.9%で9月下旬には債権者集会が開催され、裁判所により破産手続き終結決定が出る見通しです。以上のように債務者が破産した場合は、残り少ない配当原資から優先債権が取られ、残りは一般債権者で分配することとなります。今回の配当率も1.9%であるようにほぼ債権回収ができないのが実情です。また破産手続き開始決定がなされた場合、知られている債権者に裁判所から債権届出のための用紙が郵送され、所定の期間までに届け出るよう通知されます。この届出をしなかった場合には債権者は失権し配当を受けることができなくなります。取引先に破産の可能性がある場合には以上の手続きを念頭に入れた上で対処していくことが重要と言えるでしょう。
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