仏ルノーが日産に書簡、招集請求について
2018/12/19 商事法務, 会社法

はじめに
フランス自動車大手ルノーが日産自動車に対し臨時株主総会の開催を要請する書簡を14日付で送っていたことがわかりました。株主総会の目的については明らかではありません。今回は株主総会等の取締役以外による招集請求について見ていきます。
事案の概要
金商法違反容疑による元会長の逮捕に揺れる日産自動車に対し、同社の株式43.4%を保有する筆頭株主である仏ルノーは臨時株主総会招集の請求を行なったとされます。その目的については、ガバナンスの適切な開示と議論としており、役員の選解任ついては触れられていないとのことです。仏ルノーは今後も日産自動車、三菱自動車を含めた3社連合の維持を希望しており、新たな関係強化の模索が主な目的ではないかと思われます。
臨時株主総会の招集
臨時株主総会の招集は原則的に取締役が行います(296条3項)。取締役会設置会社の場合は取締役会の決議によって決定することになります(297条)。その際に株主総会の日時、場所、目的、書面投票、電磁投票などについて決定し、開催日の2週間前までに、非公開会社では1週間前までに株主に通知します(298条、299条)。この株主総会招集は一定の場合には株主も行うことができます。以下具体的に見ていきます。
株主による招集請求
会社の総株主の議決権の3%を6ヶ月以上保有する株主は会社に対して株主総会の招集を請求することができます(297条1項、2項)。非公開会社の場合は6ヶ月の保有期間制限はありません。また3%に達するのであれば複数の株主が集まって請求することも可能です。株主による招集請求があっても、遅滞なく招集手続が行われない場合、または請求の日から8週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は裁判所の許可を得て株主が招集できます(同4項)。上場会社の場合は証券会社を通じて個別株主通知も必要となります(振替法154条2項)。なお全議決権の3%の保有は臨時株主総会終了まで維持しなくてはならず、途中で満たさなくなった場合は、招集権限の無い者による招集となり決議不存在確認訴訟の対象となってしまいます。
取締役会の招集請求
株主総会だけでなく、取締役会についても株主は招集請求することができる場合があります。取締役が会社の目的の範囲外の行為、法令定款違反をするおそれがある場合に請求できます(367条)。取締役会については株主だけでなく監査役も「必要があると認めるとき」には招集請求ができ、5日以内に請求日から2週間以内の日を開催日とする招集通知が発せられない場合は監査役自ら招集できます(383条2項、3項)。
コメント
仏ルノーは日産自動車の株式を43.4%保有しているとされております。会社法上の株主総会招集請求の要件は満たしており、請求日である14日から8週間以内の日を開催日とする臨時株主総会の招集通知が発せられない場合は裁判所の許可を得て自ら招集することができると考えられます。このように一定の場合には株主によって招集請求されることになり、株主自ら招集する場合には議長も従来の者でなく株主総会で決められることとなります。株主総会でのイニシアチブは株主が握ることとなり、会社側はコントロールしにくくなると言えます。会社法の要件を満たす者による招集請求がなされた場合には、それを放置せずに慎重に対処していくことが重要と言えるでしょう。
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