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こんにちは。法務専門キャリアアドバイザーの潮崎です。
今回は、求職者の方々からご質問を受けることが多い『転職時の給与額の決定要因』についてお話します。
先日、サービス業界で働く旧知の法務マネージャーのTさんから「業務量の割に給料が渋いので転職したい」と連絡をもらいました。
皆さまご存じのように、夏のボーナスをもらったばかりのこの時期、転職を決断する人は少なくありません。
聞くと、Tさんは営業部からの無茶な要求・納期にも応えながら、日々、法務相談や契約書審査などに忙殺されているそうですが、その頑張りが上から評価されている様子もなく、ボーナスも期待より遥かに低い金額だったそう。
「今回の転職では給与額にこだわりたい」と強い決意を覗かせていました。
組織風土も人間関係も、残業量も、仕事の進め方も、業務内容も、入社前の期待を裏切る可能性があるが、「給与はそうそう裏切らない」とやや寂しげに語っていたのが印象的でした。
Tさんは転職後の給与額に強いこだわりを見せていましたが、実際問題、転職者の給与額はどのような要因で決まるのでしょうか?
もちろん、「具体的なところは会社による」という大前提はあるものの、大まかな給与額の決定構造は、どの会社も似通ったところがあります。
ポイントとなるのが、(1)採用予算と(2)選考評価、そして、(3)候補者の個別事情の3点です。
(1)採用予算
言うまでもないことかもしれませんが、企業が“採用予算”の範囲を超えた給与額を提示することは原則としてありません。いわゆる、「ない袖は振れぬ」ということですね。
そして、“採用予算”は、
・社内の同種ポジションの給与水準(業界や業績、内資・外資の別、各社の利益還元方針などが影響)
・人材市場における需給トレンド
・同種ポジションの給与相場
・自社の採用難易度(採用ブランド力の高低等)
などにより決定されます。そして、実際のところ、この“採用予算”が転職者の給与額を決める最も大きな要因となっています。
よく、「給与を上げたければ、業界選びが大事」という言われ方をすることがありますが、これは、給与水準の高い業界では、そもそもの“採用予算”が高めに設定されるからに他なりません。
ちなみに、法務パーソンについては、近年、売り手市場のトレンドとなっていることから、各社、従前よりも高めに“採用予算”を設定する傾向が見られています。
その意味で、法務パーソンにおいては、現在、転職で給与を上げやすい環境があると言えます。
(2)選考評価
転職者の給与額を決める二番目に大きな要因が候補者の“選考評価”です。
これは内情を知らないと、なかなか見えにくい部分だと思いますが、企業の出す内定には、候補者の“選考評価”に応じた熱量のグラデーションが存在します。
すなわち、同じ内定でも、ある候補者に対しては「絶対に採用したい、逃がしたくない」という高い熱量で内定を出し、別の候補者に対しては「基準はクリアしているので、自社の出す条件で来てくれるなら来て欲しい」という熱量で内定を出しているということです。
“選考評価”は、候補者のスキルセットや経験値、人柄、キャリア観などで決められますが、やはり、書類や面接を通じて高い選考評価を受けることは、高い給与提示を引き出すうえで、重要なポイントになります。
(3)候補者の個別事情
転職者の給与額を決める、三番目に大きな要因が、“候補者の個別事情”です。
候補者の選考評価が高い場合、企業側は、採用予算の範囲内で、提示する給与額を上方修正することがあります。
その際、企業側は「どのくらいの金額を上乗せすべきか」で頭を悩ませることになりますが、ここで大きな影響を与えるのが、“候補者の個別事情”です。具体的には、
・候補者の現職の給与額
・内定競合している他社の提示額
などが挙げられます。
現職よりも給与が下がるとなると、内定受諾の可能性は下がりますし、他社が自社よりも高い給与額を提示している場合、競り負ける可能性が高まります。
だから、選考評価が高い候補者に対しては、これらの金額を十分に加味したうえで、給与額を上方修正しています。
ちなみに、選考中に「希望給与額」を聞かれることも多いと思いますが、こちらは、よほど選考評価が高くない限り、企業からの提示額にそこまで影響を与えないと感じています。
「希望給与額」については、どちらかというと、給与イメージに隔たりがないかという面で、内定を出すか否かの判断材料とする企業が多いようです。
また、「希望給与額」を伝えた後に、なぜその金額なのか?と、企業側から金額の説明を求められるケースもあります。
その意味で、説得力のある材料がない限り、現職給与から大きく外れた希望給与額(目安として現職給与+100万円以上)の提示は難しい面があります。
ここまで、転職者の給与額の決定要因についてお話してきましたが、結局のところ、高い給与額の提示を受けるために転職者ができるムーブは、
(1)給与の高そうな業界・求人に応募すること
(2)そこで高い選考評価を得ること
そして、ややテクニカルなところでは、
(3) たとえ、給与以外の面で難があったとしても・・本命以外で他社から好条件での内定を得ておくこと
などに尽きます。
前出のTさんも、私の話を聞いたあと、「どこなら自分に高い給与を提示してくれそうか」、応募する求人の分析に腐心していました。
職人肌が多い法務パーソンの中には、お金の話をすることにある種の後ろめたさを感じる人も少なくありませんが、自分の頑張りに対する会社からの評価と密接に繋がっているのが「給与」です。
また、どのくらいの「給与」をもらいたいかにより、働き方やキャリア選択の優先順位、不満点への許容範囲なども変わってくるところがあります。
『欲しい給与額を考えることは、キャリアを考えること』
現在、そして5年後、10年後にどのくらいの給与をもらいたいか。 ぜひ一度、立ち止まって考えてみてください!
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株式会社パソナ 法務・ハイクラス専門キャリアアドバイザー 潮崎明憲 大阪市立大学法学部卒、近畿大学法科大学院修了。法務・総務担当として入社した営業研修会社の事業を4年にわたって支えた後、2014年より、米国訴訟における日本企業支援(eディスカバリー)業務に従事。2016年からは、法務専門エージェンシー、株式会社More-Selectionsにてエージェントとして、1000社超の企業の法務職採用に携わる。2021年9月、同社のパソナへの吸収合併を機に、株式会社パソナにて法務・ハイクラス専門のキャリアアドバイザーを務める。 |
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