外国企業と契約を締結する際の注意事項のまとめ
2017/01/30 海外法務, 外国法, その他

1 裁判管轄と準拠法
(1)裁判管轄と準拠法
国際契約ではどこの国の法律を適用し、どこの裁判所で裁判するかが重要となります。
どこの国の法律を適用するかについて定めたものが「準拠法」といいます。それに対してどこの裁判所で裁判するかを定めたものが「管轄裁判所」といいます。
国際取引における準拠法と管轄
(2)準拠法とは
①準拠法
契約書の中で準拠法の合意の規定を定めなかった場合には、管轄裁判所のある国の国際私法と呼ばれる法律により準拠法を判断することになります。もっとも、これでは予測可能性が低いため、契約書で合意するほうが望ましいです。
準拠法条項の規定の仕方(英文契約)
②法廷地法の原則
国際私法は、国によって内容が異なります。よって、準拠法の判断の前提として、準拠法判断の道具となる国際私法はどこ国の国際私法を使用するのかが問題となります。
この点は、「法廷地法の原則」というものがあり、一般には、事件が提起された裁判所が、自国の国際私法に従って準拠法を決定するという扱いが広くなされています。
したがって、ある事件が日本の裁判所に提起された場合には、日本の裁判所に国際裁判管轄がある場合は、準拠法は日本における国際私法に基づき判断されることになります。
③日本における国際私法とは
日本における国際私法は、「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」という)という法律になります。
通則法においては、行為能力、成年後見、法律行為、相続等、個々の法律関係ごとに、準拠法について規定しています。そして国際取引において関係することが多い法律行為(契約)については、同法の7条から12条に規定されています。
法の適用に関する通則法(条文)
準拠法と日本の国際私法
(3) 国際裁判管轄とは
2012年4月1日から施行された民事訴訟法の改正によって、国際裁判管轄に関する規定(民事訴訟法3条の2~7)が規定されました。管轄の合意がない場合にはこの規定を使って国際裁判管轄を決めることになります。
民事訴訟法(条文)
(4)実際にどのように相手方と交渉するか(優先順位)
国際契約では通常、当事者双方ともが紛争になった場合に自国の裁判所で自国の法律を適用して解決する合意を目指します。それは、自国の裁判所であれば自国の弁護士に依頼できるのでコミュニケーションの壁もなく、費用の予定も立てやすいこと、また自国の法が適用されれば裁判結果も予想しやすいからです。
もっとも、当事者間に力関係があれば別ですが、譲歩しなければ契約は成立しません。そうすると、準拠法と管轄裁判所のどちらかを妥協する結果となることもあります。その場合にはどちらを重視し、どちらを妥協するかを決めておく必要があります。
結論としては、原則として管轄裁判所を日本企業が望む裁判所にする方がいいと考えられます。なぜなら、準拠法を日本、管轄裁判所を外国裁判所とした場合には、外国裁判所では日本法を正しく理解しておらず正確に適用できるとは限らないからです。
国際契約に関する裁判で不利にならないために
2 国際売買契約
(1)国際売買契約
国際取引の中でも、売買取引は基本的なものです。その様々な条件を取り決めたものが、国際売買契約(Purchase/Sales Agreement)です。
国際売買契約は、両者の法制度・商習慣・伝統・文化などの違いや、言語の違い、船や航空機を利用しての長距離輸送が不可欠であることなどにより、トラブルが発生することの多く、リスクの高い取引です。そういったリスクをあらかじめ回避するためにも国際売買契約書を交わします。
国際売買契約書に記載する内容としては、商品とその品質・仕様、売買価格、決済通貨、数量、梱包方法、代金決済、出荷/引渡し、保険が考えられます。
国際売買契約書
国際売買基本契約の要点
(2)ウィーン売買条約
ウィーン売買条約は、国境を越えて行われる物品の売買に関する条約で、契約や損害賠償の基本的な原則を定めた国際条約です。正式名称は「国際物品売買契約に関する国連条約(United Nations Convention on Contracts for the International Sale of Goods: CISG)」です。
当事者の所在する国がウィーン売買条約に締結していた場合にはウィーン売買条約の適用可能性がありますので、確認が必要となります。
なお、ウィーン売買条約の内容は日本の民法とは異なる箇所も多く、ウィーン売買条約の適用を排除したい場合もでてきます。その場合には、契約書で明確にウィーン売買条約を排除する旨(オプト・アウト)を規定しなければなりません。
国際物品売買契約に関する国際連合条約(外務省)
ウィーン売買条約の概要:日本
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