愛知県警が株主総会特別警戒本部設置、総会屋規制について
2020/05/18 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
愛知県警は7日、今年の株主総会の集中期を控え「株主総会特別警戒本部」を設置していたことがわかりました。新型コロナウイルスによる業績悪化につけ込んだ総会屋による恐喝を警戒しているとのことです。今年も定時総会の季節が近づいております。今回は会社法の総会屋規制を見直していきます。
事案の概要
日経新聞によりますと、愛知県警は6月の株主総会集中期を前に特別警戒本部を設置し、捜査員約150人が各企業の株主総会会場での警戒や総会屋による不法行為の取締に当たるとされます。愛知県内に本店を置く上場企業を中心に5月は15社、6月は約150社が定時株主総会を開くとされ、6月26日が一番集中するとのことです。今年は新型コロナウイルスの感染拡大が生じていることから業績悪化を理由とする恐喝行為や、議事の妨害行為の発生も予想され警戒を強めております。
総会屋とは
株主総会に出席し、議事進行を妨害したり、逆に会社側に協力することによって会社に金品等を要求する者を一般に総会屋と呼びます。会場で「異議なし」などと大声で叫び強引に総会を終わらせるタイプ、逆に経営陣に対する批判や質問を執拗に繰り返し議事を妨害するタイプ、それらの中間に位置し両者を仲裁するようなタイプなどに分けられておりました。また会社に新聞の購読やコンサルタント料、賛助金などを要求するといった総会屋も存在し、かつては100億円規模の不正融資事件も発生しておりました。近年は会社法等の規制強化により全盛期に比較して激減していると言われております。
会社法による総会屋規制
会社法120条1項によりますと、「株式会社は、何人に対しても、株主の権利…の行使し関し、財産上の利益の供与…をしてはならない」とされております。平成17年の商法大改正の際に新設された規定で会社財産の浪費と総会屋の活動を防止し、会社経営の健全化を図ることが目的とされます。また罰則も規定されており、会社から利益供与を受けた者、利益供与を要求した者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(970条2項、3項)、利益供与の要求に際して「威迫」した場合には5年以下の懲役または500万円以下の罰金となっております(同4項)。また場合によっては株主の権利行使に関する贈収賄罪にも該当しうることとなります(968条)。
利益供与における役員等の責任
総会屋に対し利益供与が行われた場合、関与した取締役・執行役は会社に対し連帯して供与した額を支払う義務を負います(120条4項)。直接供与を行った役員は無過失責任、それ以外の役員は「注意を怠らなかったことを証明した場合は」責任が免除されます。これらの責任は株主による代表訴訟として提起されることも考えられます(847条1項)。そして供与側であるこれらの役員も罰則として3年以下の懲役、300万円以下の罰金が課される場合があります(970条1項)。
コメント
以上のように総会屋に対する利益供与は会社法によって供与する側もされる側も規制されております。警察庁の統計ではかつては1万人を超えていたと言われている総会屋も現在では200人程度とされ、実際に今も活動している総会屋は20人に満たないともいわれております。度重なる法改正により総会屋規制は強化され、コンプライアンス重視の機運も重なり総会屋は激減することとなりました。しかし一部の総会屋は水面下で今なお活動しているとされます。そこに加え今年は新型コロナウイルスの感染拡大によって会社の業績悪化だけでなく、定時株主総会の開催・運営自体にも影響が出ております。そのような現状につけ込んだ総会屋の出現も予想されております。上記の法規制を念頭に、毅然とした対応を心がけていくことが重要と言えるでしょう。
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