公取委が行政処分免除、私的独占と確約手続きについて

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はじめに

 公正取引委員会は12日、私的独占の疑いで立ち入り検査を受けていた製薬会社が出した改善計画を認定し、行政処分を免除したと発表しました。確約手続きが適用されたのは2例目とのことです。今回は独禁法が規制する私的独占と確約手続きについて見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、がん細胞に目印をつける放射性医薬品「PET検査薬」の製造販売を手掛ける「日本メジフィジックス」(江東区)は2018年6月に私的独占の疑いで公取委に立ち入り検査を受けておりました。同社は日本国内でのPET検査薬の販売を長く独占しており、病院や取引先に「他社が開発した検査装置では自社製品は使えない」などとして他社の検査装置を使用しないよう伝えていたとされ他社の新規参入を妨害していた疑いが持たれておりました。

私的独占とは

 独禁法2条5項によりますと、事業者が他の事業者の事業活動を排除し、または支配することによって公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することは私的独占として禁止されております。市場で高いシェアを有する事業者が新規参入者を排除するなどして健全な競争を阻害するといった行為が該当します。違反した場合には排除措置命令や課徴金納付命令の対象となっております(7条、7条の2)。なお課徴金の算定率は売上額の6%となっております。

私的独占の要件

(1)行為要件
 公取委のガイドラインによりますと、排除行為とは他の事業者の事業活動の継続を困難にさせたり、新規参入者の事業開始を困難にさせたりする行為であって一定の取引分野における競争を実質的に制限することにつながる様々な行為をいうとしています。典型的には不当廉売や抱合せ、供給拒絶、差別取り扱いなど不公正な取引方法として規制されている行為が該当することになりますがそれ以外でもあらゆる行為が該当しうることになります。判例では正常な競争手段の範囲を逸脱する人為性と他の事業者の参入排除効果の有無で判断するとされております(最判平成22年12月17日)。

(2)効果要件
 一定の取引分野とは上記排除行為によって競争の実質的制限がもたらされる範囲を言い、商品の範囲と地理的範囲を画定することとなります。いずれも基本的には需要者から見た商品の代替性の観点から判断されますが、供給者側の供給難易度も考慮されます。そして競争の実質的制限とは競争が減少し特定の事業者がある程度自由に価格、品質、数量その他を左右することによって市場支配力を形成、維持、強化することを言うとされます。その判断には市場におけるシェアや競争の状況、他の事業者の参入の難度などを考慮されるといわれております。

確約手続きとは

 確約手続きとは、独禁法違反の疑いが生じ、公取委から通知を受けた事業者が自主的に確約契約を作成し、公取委から認定を受ければ排除措置、課徴金納付命令を免れるという制度です。TPP締結に伴い平成28年改正で導入されたものです。具体的には公取委から違反の疑いと確約認定申請ができる旨の通知を受けた日から60日以内に自主的に違反事実を是正する原状回復措置の計画を作成し、公取委の診査を受けることとなります。公取委が違反状態を排除するに十分と認め、その履行が見込まれる場合に認定を行い、それにより排除措置などの行政処分は行われなくなるというものです。なおその後確約内容を実施していない場合は取り消されます。

コメント

 本件で日本メジフィックスは日本におけるPET検査薬市場で長らく独占状態にあったとされ、自社開発の検査装置以外では自社製品は使えないとして競合他社の参入を妨害していた疑いが持たれておりました。他社の参入を防ぐことによってより市場支配力が増強されることが予想され私的独占に当たる可能性があったと言えます。同社では自社の検査薬が他社製品でも仕様できるかを確認して取引先に通知するといった改善計画を公取委に提出し認定されました。以上のように不公正な取引方法などの行為は市場への影響の強さによって、より厳格な規制に置かれる私的独占に該当しうることとなります。私的独占の場合はかなり高額な課徴金が命じられる場合もあります。公取委からの通知があった場合には積極的に確約手続きを利用し行政処分だけでなく、それ以上の公取委の捜査・判断を回避していくことが自社イメージを保つ上でも重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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