楽天と公取委が対立、優越的地位の濫用と今後の動きについて

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はじめに

 通販サイト「楽天市場」での送料無料化が独禁法の優越的地位の濫用に該当するかについて公取委と楽天で対立が続いていることがわかりました。出店者に不利益が及ぶのかが争点となっているとのことです。今回は優越的地位の濫用と緊急停止命令について見ていきます。

事案の概要

 日経新聞電子版によりますと、楽天は3月18日以降、消費者が税込み3980円以上購入した場合出店者負担で自動的に「送料無料」とする方針を打ち出しておりました。これに対し出店者側は利益が出なくなるなどとして反発しており、公取委も優越的地位の濫用に当たる疑いがあるとして立入検査を行っておりました。楽天側は売上・顧客数が増加すれば利益は減少しないと主張しておりますが、公取委側は利益増加の実証的根拠は乏しいとして両者の対立は深まっているとのことです。専門家は今後公取委による緊急停止命令の申立も行われるのではないかと指摘しているとされます。

優越的地位の濫用規制

 優越的地位の濫用についてはこれまでも取り上げてきましたが、ここでも簡単に触れていきます。独禁法2条9項5号では自己の取引上の地位が相手より優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為を優越的地位の濫用行為としています。優越的地位の濫用が認められた場合、公取委は排除措置命令を出すことができ(20条)、また課徴金納付命令の対象となっております(20条の6)。なお継続的な優越的地位の濫用行為に対しては公取委は必ず課徴金納付命令を出さなければならないとされております(同カッコ書き)。

優越的地位の濫用の要件

(1)優越的地位
 公取委のガイドラインによりますと、優越的地位とは取引の相手にとって自己との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障をきたすことになるため、著しく不利益な要請等を行っても相手が受け入れざるを得ないような場合を言うとされております。判断要素としては相手の取引依存度、市場における地位、取引先変更の可能性、自己と取引する必要性などが挙げられております。

(2)濫用行為
 濫用行為とは正常な商慣習に照らして不当に次の行為を行う場合を言うとされております(2条9項5号イ~ハ)。①取引相手に取引にかかる商品・役務以外のものを購入させる、②経済上の利益を提供させる、③取引相手に取引にかかる商品について受領拒否、返品、支払い遅延、減額等の相手に不利益となる事項等が挙げられます。

(3)公正競争阻害性
 優越的地位の濫用における公正競争阻害性は「自由競争基盤の侵害」とされております。取引主体の自由かつ自主的な判断により取引が行われる状態を侵害することだと言われております。つまり相手方の自由な判断を抑圧するような状態です。①相手に与える不利益の程度、②当該行為が広く用いられているものか、③予め明確にされていたものか、④相手に要請する過程、⑤相手の合意の有無などで判断しているとされております。

緊急停止命令とは

 独禁法に違反する事実があっても排除措置命令が出されるまでは一定の期間を要します。その間に競争秩序に回復し難い侵害が生じることも有りえます。そこで排除措置命令までの仮の措置として緊急停止命令が規定されております(70条の4)。公取委の申立により裁判所が非訟事件手続法の規定に基づく決定で出されることとなります(同2項)。この緊急停止命令に違反した場合は30万円以下の過料となっております(98条)。

コメント

 本件で楽天側は送料無料化してもそれにより売上と顧客が増加し利益は減らないとし、また「送料無料」ではなく「送料込み」と改称して商品価格に送料を上乗せしやすくするとしています。これに対し公取委側は利益が減らない根拠が乏しく、また単なる名称変更で中身はなにも変わっていないと指摘しており平行線の様相を呈しております。楽天市場での送料無料化まで1ヶ月を切っており、排除措置命令までに仮の措置として緊急停止命令が出される可能性もあるとの指摘がなされております。近年インターネット上での影響力が大きい、いわゆるデジタルプラットフォーマーへの公取委による監視が強化されております。自社の意向に従わざるを得ない立場にある取引先に対して方針に従う要請を行う際にはこれらの独禁法上の規定や下請法の規定に抵触していないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

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[著者情報] mhayashi

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2008年より中央大学ビジネススクール客員講師(13年より同客員教授)
2016年より2018年まで東京大学大学院法学政治学研究科教授
2019年ベンチャーラボ法律事務所開設

主にベンチャー・スタートアップ支援、M&A、国際取引、一般企業法務を取り扱う。

主著として、『業務委託契約書作成のポイント』(共著)、『契約書の見方・つくり方(第2版)』、『ビジネス法律力トレーニング』、『ビジネス常識としての法律(第2版)』(共著)、『シチュエーション別 提携契約の実務(第3版)』(共著)、『会社役員のための法務ハンドブック(第2版)』(共著)などがある。
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