大阪市が関電に再調査要求、株主の権利について
2019/10/23 商事法務, 会社法

はじめに
金品受領問題で揺れる関西電力は9日、再調査を担当する第三者委員会の設置を発表しました。
これに先立ち同社筆頭株主である大阪市が市の推薦者を委員に加えるよう要請していたとのことです。
今回は株主が会社に対して行使できる少数株主権について見ていきます。
事案の概要
関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役から金品を受領していた問題で、2日の社内調査の公表後も新たに金品受領が発覚するなどして第三者委員会による徹底した全容解明が求められておりました。
同社の7%の株式を有する筆頭株主である大阪市は市の推薦者を加えるべきとして元市長で弁護士の橋下徹氏を上げていたとされます。
要請を拒否した場合は株主代表訴訟も検討するとしておりました。
関電側は元検事総長の但木敬一氏をはじめ元日本弁護士連合会会長の久保井一匡氏等を選任し大阪市側も一応の納得を示したとのことです。
会社法上の株主の権利
会社法上株主には原則的に剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会での議決権を行使する権利が与えられております(105条)。
これらは定款で別段の定めを置くなど一定の例外を除けば1株保有するだけで認められる権利と言えます。
それに対し一定の割合の株式を保有することによって行使することができる権利を少数株主権と呼びます。
臨時株主総会の招集や検査役の選任などが挙げられます。
なおこの保有割合は複数の株主が合計して満たせば、共同で権利行使することも認められております。以下具体的に見ていきます。
少数株主権
(1)議決権の1%以上
議決権の1%以上を保有することによって行使できる少数株主権としては①株主総会の議題追加請求権と②議案の要領通知請求権、③招集手続き等に関する検査役選任請求権が挙げられます(303条、305条、306条)。
なお①と②については議決権300以上を保有することでも行使可能です。
なおこれらの株主権は公開会社である場合は6ヶ月以上の保有期間が設けられております。
(2)議決権の3%以上
議決権の3%以上を保有するとまず①株主総会の招集請求ができるようになります(297条)。
そして②役員の解任の訴えを提起することも可能です(854条1項)。
この2つに関しては公開会社の場合は6ヶ月の期間制限があります。
また③当該会社および子会社の会計帳簿の閲覧・謄写請求が可能となり、④また業務執行や財産状況調査のための検査役選任請求もできるようになります。
①以外の権利に関しては議決権制限株式であっても3%以上の株式を保有することで行使することができます。
(3)議決権の10%以上
議決権の10%以上を保有すると①会社解散の訴えを提起することが可能となります(833条)。
これについても3%以上の株式を保有していれば議決権が制限されていたとしても行使することができます。
そして②募集株式発行に際し、新たに支配株主が現れる場合には反対することができ、その場合には会社は株主総会による決議が必要となります(206条の2)。
これは平成26年改正で新設された規定で募集新株予約権の場合も同様です(244条の2)。
株主代表訴訟
提訴請求しても60日以内に会社が役員等に責任追及を行わない場合、株主は会社に代わって提訴することができます(847条1項)。
これを株主代表訴訟と呼びますが、これには株式の保有割合による制限はありません。
ただし公開会社である場合は6ヶ月以上保有する必要があります(同2項)。
コメント
本件で大阪市は関西電力の株式を約7%保有しているとされております。
会社法上大阪市は同社に対して臨時株主総会の招集請求、会計帳簿閲覧請求、検査役選任請求ができるほか、役員解任の訴えや株主代表訴訟の提起も可能です。
これらの株主権を背景に積極的に全容解明を求めていく姿勢を示しております。
以上のように株主はその保有する議決権割合に応じて会社に対し行使できる権限が増加していきます。
近年株主はより積極的に株主総会等で質問や発言をするなどいわゆる「もの言う株主」も増加しております。
株主にはどのような権利が認められているのか、またそれに対し会社側はどのような対応を行う必要があるかを予め検討し株主総会等に臨むことが重要と言えるでしょう。
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